研究課題/領域番号 |
20K10226
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柄 優至 広島大学, 病院(歯), 助教 (50737682)
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研究分担者 |
谷本 幸太郎 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (20322240)
阿部 崇晴 広島大学, 病院(歯), 助教 (20806682)
國松 亮 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (40580915)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨再生 / ダイオードレーザー / コールドレーザー / SHED |
研究実績の概要 |
本研究は、低侵襲で細胞採取が可能なヒト乳歯歯髄由来のstem cells from human exfoliated deciduous teeth(SHED)に着目し、歯髄中に含まれる幹細胞のうち、どの細胞集団が骨再生に関与しているのかの解明および、優れた生体活性化作用を有するコールドレーザー照射が、SHEDや骨再生誘導にどのような影響を及ぼすのかを検証することが目的である。 抜去された乳歯からSHEDを単離・培養し、FACSAriaⅡセルソーターを使用し、SHEDからCD146陽性細胞集団(CD146+)およびCD146陰性細胞集団 (CD146-)を単離・培養した。6 週齢免疫不全マウス(BALB/c-nu)の頭蓋冠に、トレフィンバーを用いて、骨欠損を作製し、アテロコラーゲンスポンジを使用して生体内移植を行った。 CD146 +およびSHEDの不均一な集団を移植すると骨の再生が観察され、CD146+細胞では有意に高い骨の再生が観察された。 骨の再生は、CD146-群の方が対照群よりも高かったが、4週間および8週間で他の移植群よりも有意に低かった。 組織学的および免疫組織化学的評価により、CD146+細胞が骨の再生と血管新生を促進することが明らかとなった。この内容は、Oral Diseases, 2020に投稿し誌上に掲載された。 超短パルス半導体レーザーを使用して、マウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1)への照射の検討をERISA BrdU Assay を用いて行い、30㎜の距離から7.91J/cm2のエネルギー密度で45秒間照射すると、最も反応が大きく適正条件を確定させた。またこの条件でALP,OPG,RANKL等の骨代謝に関わる遺伝子やタンパクについて解析を重ねている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抜去された乳歯から、歯髄組織を採取し、SHEDはをGronthosらの方法に準じて単離・培養すること、さらにFACSAriaⅡセルソーターを使用し、SHED(継代数3~5) からCD146陽性細胞集団(CD146+)およびCD146陰性細胞集団(CD146-) を単離・培養に成功した。また、6週齢免疫不全マウス (BALB/c-nu) の頭蓋冠に、トレフィンバーを用いて、直径5mmの骨欠損を作製し、骨欠損モデルを確立した。さらに、この骨欠損モデルに、直径5mmのアテロコラーゲンスポンジを担体として、ヘテロなSHED細胞移植群、CD146+SHED細胞移植群、CD146-SHED細胞移植群を設定し、生体内移植を行う手技を確立しており、コントロールと比較し、高い骨の再生を確認している。また、骨欠損モデルに対し、超短パルス半導体レーザーを照射したところ、こちらもレーザー照射のみでも、高い骨の再生を確認している。このため、動物実験に関しては、実験計画書のすべては行えていないものの、令和3・4年度で行う実験のうち半分近くの内容が行われており、極めて順調と考えられる。 細胞実験に関しては、セルラインであるMC3T3-E1での検証は進んでおり、最適な照射条件が設定できており、PCRやウェスタンプロットについても進めているところである。レーザー照射をすることにより、非照射群と比較してALP,OPG,RANKLの遺伝子が上昇することが分かっている。現在、SHEDやヒト滑膜細胞においても反応を確認しているところである。骨の治癒に、骨芽細胞は当然であるが、滑膜細胞に大きな役割があるのではないかと実験を進めている状態である。 以上より、実験はおおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験に関しては、頭蓋冠の骨欠損モデルを使用し、超短パルス半導体レーザーのみでの効果を正確に判定するために、n数を増やして検証をする。また、アテロコラーゲンスポンジを担体として、CD146+SHED細胞を移植し、さらに超短パルス半導体レーザーを照射し、骨形成に相乗効果があるかを検証する。μCTを用いて、三次元的に解析を行い、組織切片を作製し、HE染色およびMasson’s trichrome染色を行うとともに、骨代謝関連マーカーの免疫組織化学染色を用いて評価する。さらに、未固定新鮮非脱灰凍結切片を作製し、LMD6500を用いてLaser capture microdissectionを行い、各組織を回収し、定量PCRを用いた遺伝子解析および蛍光イメージャーを用いたWestern blot解析を行う。 細胞実験としては、骨治癒の起点が骨膜で起こっているのではないかという仮説を立てた。このため、当初はSHEDおよび永久歯歯髄由来MSCs(DPSCs)、MC3T3-E1、ヒト歯肉上皮細胞株 (HOK) を使用する予定であったが、SHEDおよびMC3T3-E1とヒト滑膜細胞を使用することとした。これらへの超短パルス半導体レーザーの影響を検討する。細胞の細胞増殖曲線、細胞倍加時間について、BrdU assayおよびMTS assayを用いて、比較・検討する。また、骨分化誘導を行い、Alizarin Red 染色、ALP染色、ALP定量試験を行い、骨分化能を対照群と比較検討する。さらに、骨形成関連マーカー(ALP、OCN、BMP-2など)の発現レベルについて、遺伝子解析およびWestern blot解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況にも記載したように、骨治癒には骨芽細胞以外に、滑膜細胞に大きな役割があると仮定し、実験を進めることとした。そのため、ヒト滑膜細胞や専用メディウム、PBS、EDTA等を合わせ約40万することから、令和3年度に滑膜細胞の購入ができなかったため、令和4年度に購入することとした。これが、次年度使用額が起こっている理由である。 また令和3年度に引き続きコロナの情勢から、学会はオンラインでの開催となっており、旅費については余剰が生じていると考えられるが、その分In Vivo実験およびIn Vitro実験ともに、免疫不全マウスや、消耗品等の試薬の使用が多くなっている。次年度は発表等で旅費に関しては、必要になってくると考えられる。 令和4年度もIn VivoとIn Vitroを並行して行う。動物実験に関しては、頭蓋冠の骨欠損モデルを使用し、超短パルス半導体レーザーのみおよび、それに加えてSHEDを移植し、骨形成に相乗効果があるかを検証ための、マウス関連費や免疫染色関連費、CT関連費が必要である。細胞実験としては、BrdU assayおよびMTS assay、骨分化誘導関連、Alizarin Red 染色、免疫染色関連、遺伝子解析およびWestern blot解析等に使用する消耗品が必要である。
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