研究課題/領域番号 |
20K10228
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
春山 直人 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (70359529)
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研究分担者 |
寺尾 文恵 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10510018)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯科矯正学 / カルシウムシグナル / 外胚葉異形成症 / 唾液腺 / 創傷治癒 / ストア作動性カルシウム流入 / Stim1 / Stim2 |
研究実績の概要 |
「カルシウムチャネロパチー」とは、細胞内カルシウムイオン濃度の制御に関わるカルシウムチャネルおよびその関連タンパク分子の異常によって引き起こされる疾患の概念である。その疾患に、細胞の「ストア作動性カルシウム(Ca2+)流入 (SOCE) 」というメカニズムが関与していることが近年判明し、応募者はこれまで歯を主体とした上皮系組織におけるSOCE関連分子の役割を中心に研究してきた。本研究では、応募者が独自に作出した上皮系組織特異的STIM1/2遺伝子欠損マウスを用いて、1. in vivoでの歯・唾液腺・毛の表現型解析 と、2. 歯・唾液腺・毛包の器官・細胞培養系によるex vivo / in vitroでの細胞内Ca2+蛍光イメージングとシグナル伝達の分子生物学的解析を軸に、口腔のQoLに影響を与えるエナメル質形成不全や唾液腺分泌の機能異常に関連した、カルシウムチャネロパチーの病態を解明することを目的としている。 昨年度は、STIM遺伝子欠損マウスの唾液腺・毛を含めた表皮の表現型解析を主に実施してきた。唾液腺構造をHE染色により組織学的に解析したが、遺伝子型による唾液腺の形態に有意な差は見られなかった。また、上皮系組織特異的STIM1/2遺伝子欠損マウスにおいて、唾液組成変化の有無を唾液採取により解析したところ、遺伝子欠損マウスに置いて唾液分泌量が減少しているのみならず塩化物イオン濃度が変化していることが示唆された。また、皮系組織特異的STIM1/2遺伝子欠損マウスにおける表皮創傷治癒について調べたところ、上皮系組織特異的STIM1/2遺伝子欠損マウスにおける創傷治癒が遅延していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子欠損マウスを用いた表現型解析に関して、唾液腺においては一部遅れている点はあるが、翌年度以後に実施予定であった表皮における解析を一部先取りして実施しているため、概ね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
組織学的解析を継続するとともに、唾液腺および皮膚組織から細胞を酵素処理にて単離し、単離した細胞内Ca2+濃度の変化の有無を分光分析装置にて定量的に計測する。また、単離した細胞においてCa2+ウェーブや Ca2+オシレーションといったCa2+動態に特徴的な変化を起こすか否かを、個々の細胞の蛍光ミクロイメージングで確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究情報収集のために参加した一部の学会が遠隔開催になったため、旅費の支出が請求額よりも少なくなり、結果として経費執行率 89.12%となった。次年度使用額は、当初予想していた論文投稿数よりも数多くの論文執筆が予想されるため、論文投稿料として使用する予定である。
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