研究課題/領域番号 |
20K10234
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
間山 寿代 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (90382639)
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研究分担者 |
藤原 尚樹 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20190100)
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
横田 聖司 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (50802401)
佐藤 和朗 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (60295996)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 変形性顎関節症 / 間葉系幹細胞 / 細胞治療 |
研究実績の概要 |
我々は、変形性顎関節症(TMJ-OA)において炎症性反応を示す顎関節周囲の滑膜細胞が、好中球やマクロファージなどの炎症細胞をどのような分子メカニズムによりTMJ周囲にホーミングさせる(集積させる)のかを明らかとするためのin vitroモデルの樹立に成功した。すなわち、酸化ストレスとしての過酸化水素(H2O2)を100-500 μMの濃度でマウス顎関節由来線維芽細胞様滑膜細胞(FLS1)を24時間刺激した際に、好中球の走化性を増強するケモカインであるCXCL15の発現が濃度依存的に増強することを明らかとした。また、興味深いことに、このH2O2によるFLS1細胞の刺激により、MAPKの一つとして知られるERKのリン酸化が増強されることを明らかとなった。加えて、MEK阻害剤であるU0126により、このH2O2により誘導されたCXCL15の発現促進効果は減弱された。加えて我々は、H2O2による刺激をFLS1細胞に与えた際に、活性酸素種(ROS)の一種として知られるヒドロキシラジカルの発生が促進されることを確認しているが、このヒドロキシラジカルを介した酸化ストレスシグナルが、ERKの活性化やCXCL15の発現誘導を引き起こすかどうかについては明らかとされていない。現在、抗酸化アミノ酸誘導体であるN-アセチルシステインの前投与により、H2O2によるERKの活性化増強効果やCXCL15の発現促進効果が阻害されるかどうかについて明らかとすべく、研究を進めているところである。 以上のように、in vitroにおける無菌性炎症としてのTMJ-OAモデルが樹立されつつある。今後は、本in vitro TMJ-OAモデルを利用して、CXCL15以外の無菌性炎症に関わるケモカインやサイトカインを明らかとして、それらに対するMSCによる抗炎症性作用の詳細について分子レベルで明らかとしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要欄で記載した通りに、in vitroにおける無菌性炎症としてのTMJ-OAモデルの樹立を達成しつつある。しかし、TMJ-OAの発症に関わると予測されるケモカインについては、CXCL15のみがピックアップされたところであり、その他のTMJ-OA関連ケモカインやサイトカインのピックアップ作業に遅れが生じているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに樹立したin vitroでの無菌性炎症としてのTMJ-OAモデルを利用して、CXCL15以外のTMJ-OA関連ケモカインとサイトカインのピックアップ作業を継続的に進める。 その後、当初の研究計画通りに、TMJ-OAの患部組織中にMSCがホーミングするためにキーになるモデル分子の絞り込みを実施する。加えて、TMJ-OAの患部組織中で、MSCがM1-MΦをM2-MΦに分極化するためにキーとなるモデル分子の絞り込みを実施する。 最終年度(令和5年度)には、前年度までに度絞り込んだMSCホーミングのためのキー分子と、MSCがM1-MΦをM2-MΦに分極化するためにキー分子を同時に強発現させたMSCを作製してラットTMJ-OAモデルマウスに投与(移植)する。次いで、投与後の遺伝子導入MSCが効率よくTMJ-OA患部組織にホーミングし、局所へのM2-MΦの動員を促して下顎頭周囲の軟骨組織や骨組織の破壊を抑制するかどうかについて組織学的に確認することにより、MSCのホーミングやM2-MΦ分極化誘導に働くキー分子を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
無菌性炎症としてのTMJ-OAのin vitroモデルを利用したTMJ-OA関連ケモカインやサイトカインのピックアップ作業の一部が令和3年度中に終了しておらず、令和4年度においても同様なピックアップ作業を継続して実施する予定であるため。
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