研究課題/領域番号 |
20K10235
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
浅川 剛吉 昭和大学, 歯学部, 准教授 (20347884)
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研究分担者 |
吉村 健太郎 昭和大学, 歯学部, 講師 (10585699)
長谷川 智一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (50274668)
笹 清人 昭和大学, 歯学部, 助教 (50823069)
上條 竜太郎 昭和大学, 歯学部, 教授 (70233939)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Down症候群 / 歯根膜由来細胞 / SDF-1 / カルシニューリン経路 / マイクロアレイ解析 |
研究実績の概要 |
本研究は自己治癒能力を高めることによる歯周組織再生医療技術を確立することを目的として、歯周疾患を特徴とするDown症候群患者と健常者の永久歯歯根膜由来細胞の比較解析を行う。無菌的に分離培養した、健常者永久歯歯根膜細胞(pPDL)とDown症候群永久歯歯根膜由来細胞それぞれに (SV40) および (hTERT) の発現ベクターを導入後,G418選択培地にて培養、single cell cloningし、 株化永久歯歯根膜由来細胞(STPDL)と株化Down症永久歯歯根膜由来細胞(STPDLDS)を獲得した。獲得した細胞についてSTR解析を行い、オリジナルの細胞起源であることを確認した。STPDLとSTPDLDSは共にSV40 positive hTERT発現の上昇を確認した。また、population doubling levelも80を超えて確認した。SDF-1発現解析の結果、FGF-2を投与後、永久歯歯根膜細胞において24,48時間後には有意にSDF-1αの発現が抑制された。また、Down症歯根膜細胞ではFGF-2の影響を認めなかった。pPDLとDown症候群永久歯歯根膜歯細胞のマイクロアレイ比較解析より、Down症候群永久歯歯根膜歯細胞においてRCAN1の発現の上昇を確認した。本研究結果より獲得したSTPDLDS においてSV40 Positive, hTERTの有意な活性の上昇,Hayflicklimitを超える細胞増殖を認めた。しかし、核型解析より、染色体の倍加を認めた。Down症候群は乳歯から永久歯への交換期遅延など、様々な歯科的特徴を認める。また、進行性の歯周炎は早期に歯を損失してしまう最大の要因ともなっている。21番染色体上にあるDSCR1の活性が亢進すると、血管形成に関するカルシニューリンシグナル経路を阻害することで血管新生を抑制する。これらの歯周炎への影響についての解析を遂行していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの状況や研究スタッフの人事等により当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
核鋳型の倍加を認めたSTPDLDSについて今後も継続的にDown症候群歯根膜由来細胞を使用しての研究を推進する為に、現在、primary のDown症候群歯根膜由来細胞のマイクロアレイ解析結果より、影響を受けているシグナルカスケードの解析を行なっている。また、iPS細胞を作成し、新たにiPSPDLDSを獲得後、歯周組織の修復機構の解析を目的として、ヒト永久歯由来細胞と重篤な歯周疾患が特徴であるiPSDSより骨芽細胞など様々な細胞への分化能解析、間葉系幹細胞の遊走制御機構やrecruitmentに関与していると報告されているStromal cell-derived factor 1αの発現解析を行なう。現在、primaryのDown症候群由来細胞とSTPDLDSは同様の発現傾向を示しておりSTPDLDSは研究シーズとして有用であると思われる。 同時に、STPDLDSとプライマリーのDown症候群由来細胞、iPSDSとの比較解析を行い核鋳型の倍化の影響について検討を重ね歯周組織の修復機構のメカニズムについて解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、樹立したDown症候群歯根膜由来細胞株のSDF-1発現解析を遂行しprimaryの細胞と比較解析を行った結果、同様の傾向を確認した。全体の研究の進行状態は遅れており、来年度も同研究を遂行する必要があり2022年度の研究費を調整した。2023年度はips細胞作成と、それぞれ獲得した細胞の比較解析を行う。
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