研究課題/領域番号 |
20K10236
|
研究機関 | 埼玉県立小児医療センター (臨床研究部) |
研究代表者 |
武井 浩樹 埼玉県立小児医療センター (臨床研究部), 歯科, 医員 (50632543)
|
研究分担者 |
藤田 智史 日本大学, 歯学部, 教授 (00386096)
山本 清文 日本大学, 歯学部, 講師 (30609764)
中谷 有香 日本大学, 歯学部, 助教 (60781391)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 味覚 / 臨界期 / 二光子イメージング |
研究実績の概要 |
大脳皮質領域における神経回路の可塑的発達は多くの場合、小児期の一定期間である「臨界期」において完了することが報告されている。一方、味覚情報に関しては末梢の感覚器である味蕾は小児期においてすでに成熟しているが、その情報を脳内に伝える脳神経線維や中継核は小児期以降も発達を続けていることが知られており、それらの投射先である大脳皮質味覚野も同様に発達過程にあると考えられる。実際、味覚野に「臨界期」が存在するかどうかは、味覚情報を処理する神経回路網の発達は小児期において完了していないと推察されるが、その「臨界期」が味覚野に存在するのかは明らかにされていない。味蕾は小児期においてすでに成熟しているが、味覚情報を脳内に伝える脳神経線維や中継核はまだ発達途上である。したがってそれらの投射先である大脳皮質味覚野も同様に発達過程にあると考えられ、味覚情報を処理する神経回路網の発達は小児期において完了していないと推察される。 本研究は、脳内のニューロン活動を経過観察できるGRINレンズをマウスに埋入した状態で、種々の味覚物質を摂取させた際のニューロン群の発達に伴う発動パターンを数週間にわたり覚醒下にて計測すると同時に、視覚野の「臨界期」に重要な役割を果たすとされるBDNFの拮抗薬を投与することで,味覚野の「臨界期」の存在を検証することを目的としている。 今年度も昨年度に引き続き味覚野へのGRINレンズ挿入法の確立に取り組んだ。しかしながら、予備実験で使用したGRINレンズは3.7mmだったが、本研究で利用するレンズは6mmとなったため、計測まで可能な個体を作成することが非常に困難であった。そのため、急性標本で確立した手術手技の侵襲度合いを大幅に抑えた慢性実験用の手技を開発し、慢性的に二光子イメージングを行うことが可能になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画では本年度は味覚野にGRINレンズを埋込んだ覚醒下動物から味覚刺激に対する応答を記録する予定であったが、味覚野へのGRINレンズ挿入法の確立が予定通り進まず、味覚応答計測が進んでいないため、研究計画から遅れている状況である。また、慢性的に二光子イメージングを行うことが可能になったが、こちらも手技の確立に時間を費やしたため味覚応答計測には至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
GRINレンズで行う予定であった実験の大半は新たに確立した慢性二光子イメージングによって代替可能であるが、覚醒動物からの味覚応答計測に関しては直接レンズを皮質に埋め込む方式の方が安定した計測が期待できる。それゆえ、次年度も引き続き味覚野へのGRINレンズ挿入法の確立に取り組み、実験計画通り進める予定である。しかし、レンズ挿入の確立が困難であるため、研究の進捗状況によって二光子イメージング法を利用した研究に切り替えることも視野に入れている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度も昨年度と同様に味覚野にGRINレンズ挿入法の確立に取り込んだが、挿入法の確立が進まず、研究計画から遅れている。そのため、使用を予定していた物品を購入しなかった。また、新型コロナ感染状況により予定していた学会への参加を取りやめた。そのため、残金が生じた。次年度の繰越金はR4年度の助成金と合わせて、GRINレンズ挿入法の確立ならびに味覚刺激に対する応答記録に使用する。
|