研究実績の概要 |
歯の正常な発育と発育異常については、種々の転写因子が関与することがこれまでの遺伝子発現解析から明らかとなっているが、遺伝子発現に続くタンパク質の動態機構についての研究は皆無である。本研究の目的は、歯の発生機序を知るために、プロテオミクス技術と解剖学的・生化学的手法とを組合せて、発生過程における上皮間葉間相互作用機構をタンパク質レベルで解明することである。 令和2年度は、各発育段階(胎生14, 16日齢)の胎生マウスの状下顎第一臼歯歯胚を用い、上皮と間葉組織の各発育過程における発現タンパク質の網羅的解析とプロファイリングを目標とし、プロテオミクスの結果から標的タンパク質を選定し、組織学的解析に向けて抗体を用い予備実験を行うべく実験計画を立て、遂行した。 令和3年度は、選定した標的タンパク質(3種類)について、免疫組織学的手法を用いて歯の各発育段階における局在の確認を行った。具体的には、ヒートマップを作成し、上皮・間葉組織の各発育段階特異的に発現しているタンパク質から3種類(ATP5B、RACK1、およびCalreticulin)を選定した。胎生14日および胎生16日齢マウスから作製したパラフィン切片を用い、臼歯歯胚に対し、HE染色と、各タンパク質特異的な抗体を用いた免疫染色を行い、各タンパク質の歯胚における局在の確認を行った。また、生後3週齢マウス切歯に対し、同様にHE染色と免疫染色を行い、歯胚成長過程における各タンパク質の局在を検討した。 令和4年度は、3種類のタンパク質特異的な抗体のポジティブおよびネガティブコントロールを組織切片上で確認したうえで、胎生期臼歯歯胚ならびに成獣マウス切歯での各タンパク質の局在を確認した。さらに本研究結果を論文にまとめ、Odonotlogyにて国際的に公表した。
|