研究課題/領域番号 |
20K10243
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
高野 裕史 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (30282172)
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研究分担者 |
福田 雅幸 秋田大学, 医学部附属病院, 准教授 (20272049)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔機能低下 / がん / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
我が国では超高齢社会を迎え、健康寿命延伸のカギを握る口腔機能が注目されている。一方で「がん」は、高齢者で罹患率が増加する傾向にあり、早期発見、早期治療が治癒率向上のための最善策と考えられているが、一般の診療所で簡便に行える信頼性の高いスクリーニング方法は存在しないのが現状である。申請者らは、これまで行ってきた周術期口腔機能管理の研究結果から、食道がん患者は口腔機能が低下していることに着目し、口腔細菌のコントロールに先立つ、口腔機能の低下は、がんの発症や増悪に深く関連しているのではないかとの発想に至り、口腔機能の分析からがん発症危険因子に関わる新しいスクリーニング法の確立が期待できると考えた。 本研究は、がん患者における7つの口腔機能(口腔衛生状態,口腔乾燥,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能)を総合的に評価し、唾液メタボローム解析による網羅的な代謝プロファイルを測定することにより、口腔機能低下者に特異的な代謝マーカーを同定し、がん患者の代謝マーカーとの関連性を分析する。さらに口腔内細菌叢をメタゲノム解析し、口腔機能低下者に特有の細菌を同定する。これらの結果から「口腔機能低下とがんの関連性」におけるバイオマーカーを解明し、口腔機能の維持・改善の意義とがん発症のリスク因子としての可能性を示すことを目的とする。 初年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で一定期間、診察を見合わせ、患者の減少が余儀なくされたが、当該年度では、徐々にがん患者の口腔機能評価を行い、症例を数十名と増やしている。また、咬合力測定システムを購入し、解析を始めている。学会において「当科におけるがん患者に関する周術期口腔機能管理の臨床的検討」を発表し、食道癌患者では、健常人に比べ残存歯数が少なく、抜歯適応歯も多かったことから、口腔機能が低下している可能性について論文で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ここ2年間、コロナウイルス感染拡大の影響で一定期間、診察を見合わせ、患者の減少が余儀なくされたことが大きく影響している。このため患者からの試料採取は困難を極め、未だ解析に十分な症例数が得られていないが、当該年から徐々にサンプルの採取が可能となってきている。また、院外業者の院内への立ち入りも制限され、口腔機能評価に必要な機器購入が大幅に遅れたが、当該年に必要な検査機器はすべて購入できた。
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今後の研究の推進方策 |
遅れている試料採取を推進する。未だ新型コロナウイルス感染拡大は収束していないが、受診可能な患者から可能な限り試料採取を行い、30症例程度での解析を目指す。初年度の試料採取の遅れから、研究期間の延長も検討する。 残っている研究費での唾液メタボローム解析による網羅的な代謝プロファイル測定や口腔内細菌叢のメタゲノム解析による口腔機能低下者に特有の細菌を同定については全症例での実施は困難と考えられるが、少数例でもデータが獲得し、今後の研究に活かしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大の影響で一定期間、診察を見合わせ、患者の減少が余儀なくされたため患者からの試料採取に係るランニングコストが減少した。予定では当該年から唾液メタボローム解析と口腔内細菌叢のメタゲノム解析を開始予定であったが、未だ解析に十分な 症例数が得られていないため、解析にかかる費用が残ったためである。よって残金を翌年度分として請求したが、検体採取数の増加とデータ解析に使用する予定である。
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