研究課題/領域番号 |
20K10247
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
江草 正彦 岡山大学, 大学病院, 教授 (90243485)
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研究分担者 |
前田 茂 岡山大学, 大学病院, 准教授 (50253000)
江國 大輔 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70346443)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダウン症候群 / 歯周病 / 次世代シーケンス |
研究実績の概要 |
今年度は,岡山大学病院予防歯科の患者3名と,同スペシャルニーズ歯科センターのダウン症患者5名の診療によって得られた臼歯部の歯肉縁下プラークをサンプルとした。対象となったサンプルを保持していた患者は,すべて軽症以上の歯周病を認めた。サンプルの解析は外部の業者へ委託し,16S rRNAのV3-V4領域をPCRにより増幅しコピー数を調べた。その結果,ダウン症患者と予防歯科の患者で明らかな差異は認められなかった。全体の傾向として,目のレベルで分類したところ,Clostridiales目,Fusobacteriales目,Bacteroidales目,Actinomycetales目において,プラーク中に比較的高い割合で存在していた。その中ではActinomycetales目が,予防歯科患者に比較的高い割合で存在していた。また,Clostridiales目とBacteroidales目は,それぞれのプラーク内の相対的な存在割合が,非常に類似していた。Campylobacterales目はプラーク中に占める割合は最大6.1%と多くはなかったが,ダウン症候群患者で比較的高い割合で存在していた。 歯周病の原因菌の中で,特にred complexと呼ばれるPorphyromonas Gingivalis, Tannerella Forsythia, Treponema Denticolaについては,Porphyromonas属,Tannerella属,Treponema属のレベルの分類まで調べた。その結果Porphyromonas属とTreponema属については,健常者の1名で共通して高いレベルが検出された。Tannerella属については,ダウン症患者の2名で高いレベルが検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は健常者とダウン症候群患者のそれぞれ10名から研究参加の同意を得て,診療中に得られたプラークをサンプルとする予定であったが,同意を頂いた人数が当初の予定よりは少ないという状況である。これは当初から想定されていたことでもあるが,ダウン症候群患者は本来短命であり,そのため年齢を20-50歳とした。一方で予防歯科外来の患者は圧倒的に高齢者の占める割合が多く,50歳以下の参加者を募ることが難しかったことが原因である。2021年度も外来患者では同様の傾向が続くと思われるため,50歳以下の患者に積極的に研究参加への同意を求めるようにする。 本研究はこれから半年後のサンプルを回収し,半年間の歯周病の状態の変化と細菌叢の変化を調べる予定である。また2021年度にはショットガンメタゲノムを行い,サンプル中の全ゲノムを解析する予定である。ショットガンメタゲノムのサンプルとしては2020年に回収したペースで回収が行われれた当初の予定は遂行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進にあたって,最も重要なのは研究への参加者の獲得である。2020年度の年度初めは倫理委員会の承認を待つことが必要であったが,2021年度にはその時間は必要なく,積極的に参加者を獲得することが可能である。20歳から50歳までの健常者の獲得が予防歯科だけで困難と判断されれば,他の診療科の協力を求めて参加者を獲得する予定である。また,歯周病の進行と細菌叢の構成の変化についても,2021年度には一部の結果が得られる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた20名から30名からのサンプルの解析が,8サンプルに終わったことが次年度使用額が生じた理由である。そこで,2021年度はさらに参加者を増やし,当初の予定以上にサンプルの解析を行うことが求められる。
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