研究課題/領域番号 |
20K10265
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡邊 賢礼 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20611180)
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研究分担者 |
井上 誠 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00303131)
真柄 仁 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (90452060)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯科 / 咀嚼 / 嚥下 / 食塊 / 顎運動 / 筋電図 |
研究実績の概要 |
超高齢社会の到来に伴い,摂食嚥下機能が低下して特別食を必要とする要介護高齢患者が増加している.摂食嚥下障害患者にとって安全な食品とは,現時点ではミキサーやペーストなどの均一で軟らかい食品あるといわれるが,その十分なエビデンスは得られていない. 本研究では運動記録から摂食行動の詳細を評価するという目的のために,ヒトを対象として顎舌運動を筋電図学的に計測するとともに,頭部および下顎の三次元運動軌跡の記録を行い,咀嚼嚥下運動に伴う筋活動様式に関わる運動様相ならびに食塊形成と移送,嚥下にいたるまでの機能評価を行う.最終的には,摂食嚥下機能と食品物性や食塊移送の関係を定量的に明らかとすることとした. 咀嚼は食物粉砕を主とする第1ステージ,食塊形成に関わる第2ステージ,食物移送にかかる第3ステージ,嚥下ステージがあり,それぞれのステージは重なり合いながら移行するが,食品の初期物性によって関連する活動様式には違いがあることを見出すための実験を行うこととし,初年度は記録システムの構築ならびに検査食品の決定,記録パラメータの決定を行うまでに至った. その結果得られた(1)1咀嚼サイクルごとの開口量,(2)各咀嚼相(開口相,閉口相,咀嚼相)時間,(3)下顎(右側または左側の)変位量,(4)下顎前後運動のパターン,(5)左右咬筋ならびに舌骨上筋群の1咀嚼サイクル当たりの筋活動量(筋電図全波整流後の積分値),というパラメータ値の変化からステージ決定のアルゴリズムが作成できるか否かの解析を行うまでにいたった.年度当初よりCOVID-19の感染拡大の影響を受けて被験者を獲得するのに難渋したため十分な量のデータ獲得にいたっていない.次年度前半までに若年者データ20名を獲得する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験内容を以下に決定した.被験者;健常若年者,被検食品;互いに物性のみならず油分が異なる2種の米菓(ハッピーターン,ハイハイン),米飯,ピーナツ各3 g(ハイハインのみハッピーターンの容量に合わせる),試行;自由摂取ならびに片側咀嚼,記録;各筋活動(左右咬筋,左右舌骨上筋群,左右胸鎖乳突筋,左側舌骨下筋群筋電図),嚥下内視鏡画像,VICONを用いた頭部ならび下顎の三次元運動軌跡.現在までに4名の被験者記録を行い,食品ごとの咀嚼嚥下動態の特徴を見出して,以下のパラメータを設定した. (1)1咀嚼サイクルごとの開口量,(2)各咀嚼相(開口相,閉口相,咀嚼相)時間,(3)下顎(右側または左側の)変位量,(4)下顎前後運動のパターン,(5)左右咬筋ならびに舌骨上筋群の1咀嚼サイクル当たりの筋活動量(筋電図全波整流後の積分値) これらの値の変化が実際の食塊形成や移送にどのように関わるか,さらにステージ定義のためのアルゴリズム作成を目指した解析を各値の時系列変化と嚥下内視鏡画像との関係から導くこととする.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,実験方法の確立を受けて引き続き被験者データの採取を行う(残り16名).得られたデータにより,2種の米菓の違い(硬さ,油分)がもたらす摂食嚥下動態の違いがどのパラメータに認められるかを確認後に,アルゴリズムによって導き出した各ステージの終了時間ごとに食塊を吐き出してもらいその物性値を計測して,食塊物性の変化についての追跡を行う.また,本アルゴリズムが米飯やピーナツ咀嚼,さらに片側咀嚼にも適用できるかどうかについて検討する.年度後半には高齢者データの採取を行う.その際,食塊形成に影響を与えると思われる唾液分泌量の測定を別に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
会計未入力
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