研究課題/領域番号 |
20K10278
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
堤 博文 日本大学, 歯学部, 講師 (30188594)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ヒト特異的DNA / Quantifiler Trio / 分解指標 / PCR阻害 / リアルタイムPCR法 |
研究実績の概要 |
腐敗あるいは陳旧化した試料についてDNA型検査を行う場合、そのDNAの分解度とTotal human genomic DNA(ヒト特異的DNA)の定量値を正確に知ることは、後のDNA型判定に使用する際のDNAを無駄にせず、なおかつ正確に検査することが可能となる。本研究は、PCR阻害に強く、DNAの分解の程度も把握可能なQuantifiler Trio DNA Quantification Kit(applied biosystems:以下Trio kit)を用いて、種々の土壌に埋めた歯について、経年的変化によるDNAの量を観察し、正確なDNA量を知ることを目的とした。令和3年度は、令和2年から黒土、腐葉土、川砂および赤玉土の土壌に12ヶ月間および18ヶ月間埋めていた歯からDNAを抽出した後、Trio Kitを用いて、ヒト特異的DNA量およびDNAの分解指標(Degradation Index:DI)について検討した。さらに、得られたヒト特異的DNA量を参考に、Globalfiler PCR Amplification Kit(applied biosystems)を用いて常染色体STR型判定を行った。 その結果、12ヶ月間経過後のDIは、黒土の場合は、平均:2.724、腐葉土で3.553、川砂で3.096および赤玉土で3.225であった。また、18ヶ月間経過後のDIの平均値は、黒土で2.515、腐葉土で5.277、川砂で2.607および赤玉土で3.958であった。 これら各土壌における試料の分解指標の値は、12ヶ月間および18ヶ月間経過した歯は、中程度の断片化、軽度のPCR阻害の可能性があることが判明した。また、常染色体STR型の検出では、12ヶ月経過した各土壌において、2~4ローカス検出不可能であった。また18ヶ月間経過した各土壌においても3~6ローカス検出不可能であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料は当講座所蔵の歯(抜去後20年~30年)を用いて、黒土、腐葉土、川砂および赤玉土の土壌に埋めた歯についての経年的変化、すなわち、埋めてからの年月が1年間経過後および1年6ヶ月間経過後の歯からDNAを抽出し、そのDNAの定量をTrio kitを用いて行い、それぞれのDNAの評価を行った。 その結果、12ヶ月間経過後の分解指標(DI)は、黒土の場合では、平均:2.724、腐葉土では3.553、川砂では3.096および赤玉土では3.225であった。また、18ヶ月間経過した各土壌におけるDIの平均値は、黒土では2.515、腐葉土では5.277、川砂では2.607および赤玉土は3.958であった。 これら各土壌における試料の分解指標の値は、12ヶ月間および18ヶ月間経過したすべての歯において、中程度の断片化、軽度のPCR阻害の可能性があることが判明した。また、常染色体STR型の検出では、12ヶ月経過した各土壌において、それぞれ1例(計4例)で2~4ローカス検出不可能であった。また18ヶ月間経過した各土壌においても3~6ローカス検出不可能であった。 令和3年10月に行われた第9日本日本法医学会学術関東地方会にて、本研究の途中経過を報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は令和2年から歯を黒土、腐葉土、川砂、赤玉土および黒土と腐葉土混合の条件に埋めた歯について、経年的変化すなわち、2年経過後および2年6ヶ月経過後の歯からDNAを抽出し、そのDNAの定量をQubit 1x dsDNA HS Assay Kit、およびTrio kitによるヒト特異的DNAの定量を行い、DNAの分解指標などの評価を行う。さらにはヒト特異的DNAの定量値を参考に、Globalfiler PCR Amplification Kitを用いて常染色体STR型検出を行う。 さらに、本年度は補助事業期間の最終年度のため、令和2年からのデータと比較検討を行い、関連学会などで発表し、関連雑誌に投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)実験経過は順調に進んでいるが、令和3年度の国内事情により、本研究の成果について、一つの学会でしか参加できず、予定していた他の学会に参加できなかった。また、本研究を行うにあたっての実験材料が当初予定していた価格が、キャンペーンなどにより安価で購入でき、残金が生じた。
(使用計画)繰越金と令和4年度の助成金を合わせて、本研究を行う際の実験材料(DNAを抽出するのに必要なキット、蛍光物質を用いて定量するQubit 1x dsDNA HS Assay KitおよびPCR阻害に強く、DNAの分解の程度も把握可能なTaqMan法を利用したTrio Kit)の購入および論文の投稿料などにあてる。
|