本研究では,環境の違いによるヒト特異的DNA量およびDNAの分解度について,Quantifiler Trio DNA Quantification Kitを用いて,4種の異なる土壌(黒土、腐葉土、川砂および赤玉土)に歯を埋め(計80本),ヒト特異的DNA量の経時的変化(3ヶ月,6ヶ月,12ヶ月,22ヶ月および26ヶ月間)およびそのDNAの分解度について検討した。さらには、各土壌および埋めた期間の違いによるSTRタイピングをGlobalFiler PCR Amplification Kitを用いて検討した。 その結果、今回使用した土壌の違いおよび埋めた期間の違いによる分解指標(DI値)の差は認められなかった。また、GlobalFiler PCR Amplification Kitによる、STRタイピングで検出される座位は、24座位であるが、男性特異性があるDYS391ローカスとY-Indelの2座位については、今回の解析から除外し、22座位がコールされるか否か検討した。22座位検出可能であったのは80例中49例認められ、そのDIは1.236から4.476であり、DNAは軽度の断片化である可能性を認めた。 また、DIが3.0以上、ヒト特異的DNA量が0.04ng/μl以下の試料では、断片化が中程度であり、検出された遺伝子座位が少ない傾向であった。さらには、DIが4.0以上の試料では、十分なDNA濃度と量があれば、検出される遺伝子座位の数が多くなり、型検出を向上させる傾向であった。
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