研究課題/領域番号 |
20K10279
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
島津 貴咲 日本歯科大学, 生命歯学部, 非常勤講師 (80582254)
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研究分担者 |
島津 徳人 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (10297947)
苅部 洋行 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (50234000)
小口 莉代 日本歯科大学, 生命歯学部, 非常勤講師 (70869164)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 薬剤性歯肉増殖症 / 補完代替医療 / ファイトケミカル / ルテイン / フェニトイン / ニフェジピン / シクロスポリンA |
研究実績の概要 |
本年度は、ルテインによるフェニトイン性歯肉増殖症の緩和メカニズムの解明を目的として、歯肉組織構成細胞や基質の運命決定機構に着目し、病理組織学的に形態解析した。所定の観察期間の後、上顎試料を摘出し固定液に浸漬させた。その後、実体顕微鏡にて観察し、脱灰パラフィン包埋、第一臼歯の矢状断薄切標本を作製した。切片は、HE染色、マッソントリクローム(MT)染色、免疫蛍光二重染色(TRPA1抗体、S100A4抗体、MMP-1抗体、PCNA抗体)を施した。上顎第一臼歯の頬側歯肉幅を計測した結果、対照群と比較してPHT投与群の歯肉が有意に肥大し、PHT+LUT投与群の歯肉肥大が有意に軽減していた。HE染色像の観察では、PHT投与群の歯肉が歯槽頂付近まで延伸しており、エオジンに染まる好酸性基質沈着がみられた。また、PHT+LUT投与群で同様の延伸がみられたが、その程度は軽微であり、基質沈着は対照群と同程度であった。MT染色像では、歯肉中において青色に濃染する膠原線維の面積が、対照群と比較してPHT投与群の面積が有意に増加し、PHT投与群と比較してPHT+LUT投与群の面積が有意に減少していた。また、TRPA1抗体とS100A4抗体の免疫二重染色では、各群で歯肉結合組織中にTRPA1を発現する歯肉線維芽細胞が確認された。MMP-1 抗体の免疫染色を施した結果、各群における陽性細胞数に有意な差はなかった。細胞増殖活性を観察するためにPCNA 抗体を用いた免疫蛍光染色を施した結果、各群における上皮、結合組織ともに陽性細胞数に有意差はなかった。以上のことから、PHT性歯肉増殖症の発症にTRPA1が関与し、歯肉肥大の病態としてPHT投与による膠原線維の増生促進が起因することが示唆された。また、ルテインがTRPA1チャネル阻害剤として機能することで、PHT性歯肉増殖症の症状緩和に有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、コロナウイルスの感染拡大による研究活動の制限がなかったため、ルテインによるフェニトイン性歯肉増殖症の緩和メカニズムの解明を目的として、歯肉組織を構成する細胞や基質の運命決定機構に着目し、病理組織学的な形態解析を遂行する事ができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ニフェジピン性歯肉増殖モデルとシクロスポリンA性歯肉増殖症モデルを対象として、次の評価項目について病理組織学的に評価する。① 歯肉線維芽細胞でのTRPチャネルの発現と局在(抗TRPA1抗体、抗TRPV1抗体)、② 歯肉の上皮細胞と線維芽細胞の増殖活性(抗Ki67抗体)とアポトーシス細胞の検出(抗カスパーゼ抗体)、③ 歯肉線維芽細胞による膠原線維の産生能(抗I型コラーゲン抗体、アザン染色)と分解能(抗MMP-2抗体、抗MMP-9抗体)、④ 増殖した歯肉組織での炎症反応の波及範囲(抗CD45抗体)、⑤ 細菌の侵入程度(グラム染色)、⑥ 歯肉における上皮-間葉相互作用の評価(抗フィブロネクチン抗体)
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染拡大に伴い、交付期間内における動物実験の実施に制限が生じたことがあったため(令和3年度)、当初計画していた動物実験と形態解析の実施時期が順延した。そのため、次年度使用額が継続的に発生した。使用計画としては、形態解析を中心とした免疫染色用の抗体購入にあてる。
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