研究課題/領域番号 |
20K10300
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
續橋 治 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (80333110)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | Klebsiella pnuemoniae / 口腔細菌叢 / クローン病 |
研究実績の概要 |
令和3年度では、前年度に開発した選択培地では選択性が劣り、雑多な口腔細菌を含むヒト口腔試料を対象とした場合には使用が難しいと判断されたため、K. pnuemoniae選択培地の改良とその有用性の検討、およびK. pnuemoniaeの新種レベルにおける同定法の確立を行った。当研究室で保有しているK. pnuemoniae認定株7株を用いて、最もK. pnuemoniaeの発育に適する、また他の口腔細菌の発育を阻害する基礎培地の検討を行った。その結果、K. pnuemoniaeは低栄養従属菌であるため、通常の培地作製で用いられる普通寒天培地の量を減じてもK. pnuemoniaeが良好な発育を示した。一方で、高栄養従属菌で占められる口腔細菌の発育を著しく阻害することが判明した。これをK. pnuemoniae選択培地の基礎培地とし、選択性を持たせるために抗菌薬のペニシリン、バシトラシン、リンコマイシン、アムホテリシンB、また本菌の判別がし易いように培地中に乳糖とpH指示薬であるフェノールレッドを添加することにより、K. pnuemoniaeの集落を選択的に黄色化させたものを改良型選択培地とした。以上の試薬で構成された選択培地を作製して、3名から採取されたヒト唾液試料をその培地に接種・培養後、実際の臨床で本選択培地が有用であるか否かを検討した。本選択培地は前年度開発した選択培地と比較して、目的とするK. pnuemoniae以外の口腔細菌の発育を著しく抑制した。さらに、K. pnuemoniaeを亜種レベルで同定可能なPCR法を用いた同定法の確立を行った。まず通法に従い、K. pnuemoniae subsp. 特異的プライマーの設計を行った。そして、亜種間での相同性を確認したところ、亜種レベルでK. pnuemoniaeを明確に同定することが可能であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に、ある程度の選択性を有するK. pnuemoniae選択培地の開発を行っていたために、本年度はスムーズに唾液等の口腔試料を対象としたKlebsiella菌を分離・検出するための選択培地の改良はスムーズに行うことが可能であった。さらに、申請者はこれまでにAggregatatibacter actinomycetemcomitans、Corynebacterium matruchotii、Microbacterium属菌、Rothia dentocariosa、Rothia mucilaginosa、Rothia aeriaなどといった病原性をもった口腔細菌を分離・検出するための複数の選択培地を開発した経験がある。また、K. pnuemoniaeを亜種レベルで同定可能なPCR法を用いた同定法の確立も、これまで申請者は数多くの細菌に対する同定法を確立してきた経験もある。これらのことも本研究課題が概ね順調に進展している理由として挙げられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究協力に同意が得られた被験者100名程度から採取した唾液試料を適当な濃度へ段階希釈し、前年度に改良した選択培地へ接種し、当研究室に設置されているインキュベーターにて培養を行う。総菌数に対する比率も算定するために総菌用培地にも同様に唾液試料を適当な濃度へ段階希釈し、接種・培養を行う。総菌用培地にはCDC羊血液平板培地を用いる予定である。総菌用培地は、当研究室に設置されている嫌気培養装置を用いた嫌気培養を行う。培養後に、培地上に形成された集落数から集落形成単位(CFU)を算定することにより菌数算定を行う。この結果により、口腔におけるK. pnuemoniae検出者率、唾液中の総菌数に対するK. pnuemoniaeの比率を求める。これにより、ヒト口腔内におけるKlebsiella菌の分布を調査する。また年齢別などのK. pnuemoniae保菌者率の違い・家庭内伝播などの検討も行う予定である。
|