研究課題
近年の研究において,口腔由来のKlebsiella pneumoniaeが腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)により腸内に定着・増殖を起こした結果,本菌がヒトのTh1細胞を過剰に活性化させて炎症反応を惹起し,クローン病などの炎症性腸疾患発症に関与することが示唆された。本菌は口腔を含む消化管の常在菌と考えられてきたが,実際に全てのヒト口腔に常在しているか否かは判然としていない。そこで本研究では,様々な口腔試料から確実にKlebsiella属菌を検出するための選択培地の開発とKlebsiella菌特異的プライマーを用いたPCR法による精度の高い同定・検出法の確立し,本方法を用いて口腔内における本菌の分布を調査した。ヒト口腔試料を対象としたKlebsiella属菌を高精度に検出するための選択培地の開発を行った。Klebsiella属菌の認定株7株を用いて,最もKlebsiella属菌の発育に適した基礎培地の検討を行った。次に,抗菌薬ディスクを用いた薬剤感受性試験を実施した。最も発育が良好であった基礎培地に,本菌の発育が阻害されない抗菌薬を添加した培地を口腔試料からKlebsiella属菌を検出するための選択培地とした。また,PCR法による同定に使用するKlebsiella属菌特異的プライマーの設計を行った。さらに,開発した選択培地を用いて,30名を対象にヒト口腔内におけるKlebsiella属菌の分布の調査を行った。本研究において,Klebsiella属菌は被験者30名中で僅か1名からのみの検出に留まり,Klebsiella属菌にとって口腔は好ましい生息部位ではないと考えられ,経口感染により本菌は口腔に住み着くことなく通過し,好ましい生息場所と考えられる消化管・腸管などに感染・常在化するものと推察された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Open Journal of Stomatology
巻: 12 ページ: 108-118
10.4236/ojst.2022.124011