研究課題/領域番号 |
20K10304
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
大貫 芳樹 鶴見大学, 歯学部, 講師 (50288114)
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研究分担者 |
梅木 大輔 鶴見大学, 歯学部, 助教 (10514937) [辞退]
成山 明具美 鶴見大学, 歯学部, 助教 (90440304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯周病 / 心不全 / lipopolysaccharide / 酸化ストレス / β受容体 / Toll like receptor 4 |
研究実績の概要 |
前年度同様、令和4年度も、12週齢の雄性マウスを①コントロール群、②Pg-LPS投与群(0.8 mg/kg/day)、③TAK-242(Toll like receptor 4(TLR4)阻害薬)投与群(1 mg/kg/day)、④Pg-LPS+TAK投与群(LPS とTAK の併用投与)の4群に分けて4週間後に心臓を摘出し、Porphyromonas gingivalis(Pg菌、主要な歯周病原性細菌)由来の内毒素(Pg-LPS)およびTLR4活性化が心臓に及ぼす影響を組織化学的ならびに分子生物学的手法を用いて詳細に解析した。 心エコー測定および心室の組織化学的解析の結果、Pg-LPS投与により心機能の低下と心筋リモデリング(線維化とアポトーシス)が観察されたが、これらはTAK-242の併用投与により抑制された。また、酸化ストレスの指標となる8-OHdGの免疫染色を行った結果、8-OHdG陽性細胞はPg-LPS投与で有意に増加したが、この増加はTAK-242の併用投与により抑制された。 活性酸素種(ROS)の産生源の1つであるNOX4の発現量およびRIP3、CaMKII、PLB、RyRのリン酸化レベルを解析した結果、Pg-LPS投与で有意な増加が認められたが、それらの増加はTAK-242の併用投与により抑制された。また、オートファジー活性化因子であるLC3-II/LC3-Iレベルおよびp62のリン酸化レベルは、Pg-LPS投与で有意な増加が認められたが、それらの増加もTAK-242の併用投与により抑制された。 以上の結果は、Pg-LPS投与による慢性的なTLR4の活性化が、NOX4による酸化ストレスの上昇を伴うCa2+ハンドリング機能とオートファジー活性を亢進し、心筋リモデリング(線維化とアポトーシス)および心機能障害を誘導することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り作製したモデルマウスを用いて、Porphyromonas gingivalis(Pg菌、主要な歯周病原性細菌)由来の内毒素(Pg-LPS)およびTLR4シグナル経路が心臓に及ぼす影響を形態と機能の両面から詳細に解析し、その研究成果を学術論文(PLoS One. 2022)および関連学会(第64回歯科基礎医学会学術大会)にて発表しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後(令和5年度以降)は、令和4年度と同様にPg-LPS投与による歯周病モデルマウスを用い、Pg-LPSの慢性投与が心筋の線維化およびアポトーシスを誘導する分子機序について解析を進める。特に、Pg-LPS依存性の酸化ストレス上昇がTLR4/NOX4を介して誘導されたことから、β受容体シグナルと合わせてこれらに関連する因子の機能についても詳細に解析する予定である。また、心筋リモデリング(線維化およびアポトーシス)に伴う心機能および心臓自律神経機能への影響もテレメトリー心電図を用いた心拍変動解析や心エコー解析を用いて評価を進める。得られた研究成果は、関連学会における発表と学術雑誌への論文投稿を通して発信する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用額が生じた理由は、当初購入予定であった吸光度プレートリーダーを本研究課題申請後、初年度に別の予算区分で購入したためである。また、研究の進捗状況からテレメトリー心電図の送信機再生委託をする必要がなくなったことである。次年度は上記のテレメトリーシステムを用いた実験に加えて、心筋におけるに酸化ストレスおよびオートファジーに関連する因子について詳細に解析する実験を計画しているため、次年度使用額は、主に抗体等のウエスタンブロッティングの試薬の購入費として使用する予定である。
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