研究課題
抗ヘルペス薬ビダラビン(Vid)はβ受容体シグナル分子である心臓型アデニル酸シクラーゼ(adenylyl cyclase 5, AC5)を選択的に阻害することで心臓保護効果を示すことが報告されている。12週齢の雄性マウスを①コントロール群、②Pg-LPS投与群(0.8 mg/kg/day、腹腔内投与)、③Vid投与群(15 mg/kg/day、浸透圧ポンプによる投与)、④Pg-LPS+Vid投与群(LPSとVidの併用投与)の4群に分けて7日後に心臓を摘出し、Porphyromonas gingivalis(Pg菌、主要な歯周病原性細菌)由来の内毒素(Pg-LPS)により誘発される心機能障害に対するビダラビンの抑制効果を組織化学的ならびに分子生物学的手法を用いて詳細に解析した。心エコー測定および心室の組織化学的解析の結果、Pg-LPS投与により心機能の低下(左室駆出率、左室内径短縮率および一回心拍出量の低下)と心筋リモデリング(線維化とアポトーシス)が観察されたが、これらはビダラビンの併用投与により抑制された。β受容体シグナル分子の1つであるCaMKIIおよびその標的分子であるホスホランバン(PLB)のリン酸化レベルを解析した結果、Pg-LPS投与で有意な増加(P(Thr-286)-CaMKIIおよびP(Thr-17)-PLBレベルの増加)が認められたが、それらの増加はビダラビンの併用投与により抑制された。また、活性酸素種(ROS)の産生源の1つであるNOX4の発現量もPg-LPS投与で有意な増加が認められたが、その増加はビダラビンの併用投与により抑制された。以上の結果は、Pg-LPSの慢性投与により誘発される心筋リモデリングを伴う心機能障害に対して、β受容体シグナル分子であるAC5の選択的阻害薬ビダラビンが抑制作用をもつことを示唆する。その作用機序として、ビダラビンがAC5の活性化による酸化ストレスの上昇およびCa2+ハンドリング機能の亢進を抑制することが示唆される。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
The Journal of Physiological Sciences
巻: 73(1) ページ: 18
10.1186/s12576-023-00873-5