研究課題/領域番号 |
20K10308
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
三浦 宏子 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (10183625)
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研究分担者 |
大澤 絵里 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (30520770)
福田 英輝 国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (70294064)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯科口腔保健 / 健康寿命 / 健康格差 / 包括的口腔保健評価指標 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、歯・口腔の健康に関する新たな包括的評価方法を開発することである。歯・口腔の包括的健康指標に関するシステマティックレビューを行い、関連研究の知見を収集した。現時点で、成人期における包括的口腔保健指標として有用性が高いと考えられたのは、国際歯科連盟(FDI)がInternational Consortium for Health Outcome Measurement(ICHOM)と共同で開発に関与した“Adult Oral Health Standard Set(AOHSS)”であった。17項目の自記式調査票によって、成人期の歯・口腔の健康を評価する特性を有しており、わが国においても活用可能な指標と考えられた。一方、健康寿命については、厚生労働省が2019年3月に発出した「健康寿命のあり方に関する有識者研究会報告書」に記載の方法に基づき、歯・口腔の健康測定用に定義を再確認した。歯・口腔の健康寿命の算出には、健康寿命の算出に一般的に用いられているサリバン法を応用するのが妥当であると考えられた。毎年必ず10 万人が誕生する状況を仮定し、そこに年齢別の死亡率と、年齢別の「咀嚼良好・不良」の割合を与えることで、「良好な咀嚼状態にある期間の合計値」(「良好な咀嚼状態にある人の定常人口」)を求め、これを10 万で除して、歯・口腔の健康寿命を求めるのが適切と判断された。その際には、簡易生命表から10 歳階級別の定常人口、国民健康・栄養調査から10 歳階級別の「咀嚼良好・咀嚼不良」の割合を得て、「健康な歯・口腔の定常人口」を求める必要がある。また、分析に必要な「咀嚼の状況」が調査項目に入っていた過去6回分の国民健康・栄養調査(2004年、2009年、2013年、2015年、2017年、2019年)の国全体の年齢階級別データは既に入手ずみである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯・口腔の健康に関する包括指標については、これまで国際間比較ができる評価指標の報告が少なかったが、本研究でのシステマティックレビューの結果、2021年に発表されたAOHSSが活用可能なものであることが新たに見出されるなど、より多様な可能性を得ることができた。また、成人期の咀嚼に着目した歯・口腔の健康寿命として、「自分が咀嚼良好であると自覚している期間の平均」を算出することの妥当性も確認できるなど、ほぼ当初の計画どおりに研究を進めることができた。本研究の実施のために不可欠な二次資料・データの一部は既に収集できているが、咀嚼評価に関する都道府県別データについては二次利用申請を行う必要があるため、その申請準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究計画では、2020年度で得た研究知見をもとに、国民健康・栄養調査などの国の統計調査を用いることにより、咀嚼機能に着目した「歯・口腔の健康寿命」全国値を経年的に算出する。また、都道府県別の「歯・口腔の健康寿命」過去6回分の国民健康・栄養調査(2004年、2009年、2013年、2015年、2017年、2019年)の二次利用申請を行い、得られたデータを用いて、都道府県別の「歯・口腔の健康寿命」の算出を行う。また、得られた「歯・口腔の健康寿命」に影響を与える要因分析を行い、複合的に分析を進める。 2022年度には、2018年度に「特定健康診査の標準的質問票」に新たに加わった咀嚼に関するデータが使用可能となる予定であるため、前年度までに得られた知見を活用して、「歯・口腔の健康寿命」について全国値と都道府県値を算出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
他研究機関に所属する分担研究者との打ち合わせについて、当初、対面での打ち合わせを複数回予定していたが、新型コロナウィルス感染症拡大のため、対面打ち合わせからオンラインでの研究打ち合わせに切り替えたため、大幅に旅費が縮減された。また、所属先機関において、できるだけ学外者の入構を避けるようにとの指示があったため、謝金での研究補助者の雇用を控えた。今後、新型コロナウィルス感染症の流行が収束すれば、当初の予定どおり、旅費と謝金を支出する予定である。
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