大腿骨近位部骨折と大腸癌の術後の日常生活活動低下を予測する予測式を開発した。平均年齢が10歳以上異なっていたため、完全に同じ変数を使用して予測式を作成することはできなかったが、どちらも基礎的患者情報及び通常の術前検査情報を基に術後の日常生活活動の低下を予測することができた。 大腿骨近位部骨折手術については、3120症例を予測式開発用(2497症例)と検証用(623症例)の2群にランダムに分けた。独立因子として、基礎的データ (年齢、性別、BMIなど)、併存疾患、血液データ、バイタルサインを使用した。予測式開発用症例において、基礎的データを使用したBasic Formula、基礎的データと併存疾患を使用したComorbidity Formula、基礎的データと併存疾患と血液データとバイタルサインを使用したLaboratory & Vital Sign Formulaを3つの予測式を開発し、それぞれの予測式の感度・特異度を調査した。さらに、検証用症例を使用してLaboratory & Vital Sign Formulaの精度を確認した。 大腸癌手術については、690症例を使用した。独立因子として、基礎的データ (年齢、性別、BMIなど)、併存疾患、血液データを使用した。比較する予測式としては、過去に発表されていたGNRI とCR-POSSUMを使用した。最後に、日常生活活動が低下低値であった症例の退院先や医療費を調査した。 高齢者の術後生活活動の低下は、本人・家族・社会保障に対して大きな影響・負担をもたらす。高齢化社会になって、年齢に拘らず大規模手術が施行されるようななってきた現在、この生活活動能力の低下をいかに防ぐかは大きな課題となっている。予防するためには、まず正確且つ簡易に予想できることが重要である。本研究は、この予測という点で、今後大きな貢献ができるものと考えられる。
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