研究課題/領域番号 |
20K10317
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
田中 誠二 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (60561553)
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研究分担者 |
杉田 聡 大分大学, 医学部, 教授 (00222050) [辞退]
丸井 英二 人間総合科学大学, 人間科学部, 教授 (30111545)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地区衛生組織活動 / 衛生教育 / 占領期 / GHQ/SCAP / PHW |
研究実績の概要 |
本研究課題は,占領期間後の日本で活発化した地区衛生組織活動に焦点を当て,健康問題の解決に向けた“住民主体の組織活動”がいかに生まれ発展したか,検証することを目的としている.令和3年度(研究第2年度)はこうした活動の基盤形成に重要な影響を与えたと考えられるGHQ/SCAPの占領政策に立ち返り,特に感染症対策の一環として推進された衛生害虫駆除の取り組みや「衛生教育」の展開を中心に検討を行った(なお,これらは当初,研究第1年度に予定していた内容であるが,新型コロナウイルス感染症流行による移動制限等のため研究計画の順序や方法を変更して進めている).具体的には,(1) GHQ/SCAPの公衆衛生福祉局(PHW)の記録文書のうち「Weekly Bulletin(週刊広報)」や「Memorandum for Record(記録用覚書)」を中心とした関連記述の収集・整理作業を進めた.(2) 占領期における公衆衛生活動の展開について,特に厚生省公衆保健局の技官らによる著作物を中心に収集・検討した.なかでも(研究第1年度からの継続課題として),のちに同省環境衛生部長として「蚊とはえのいない生活実践運動」を指導・牽引することとなる楠本正康(当時,保健課長)に着目し,衛生教育の推進や保健所法改正(1947年9月)に関わる占領軍との折衝など彼が果たした役割を考察した.占領期において衛生教育の普及に深く関わった楠本は,衛生教育の1つの方法として“実践を通じた”学び(実践教育)を重視した.こうした捉え方が「蚊とはえのいない生活実践運動」の全国的波及に重要な意味を持ったものと推察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大による移動制限等により,計画していた国立国会図書館(東京)等での史資料調査が困難であった.そのため新たな研究材料の探索・収集作業が十分に進められていない現状にある.研究計画の見直し・変更により次年度の研究へと繋げたい.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,令和2~3年度の研究内容と関連づけながら,地区衛生組織活動の量的拡大と活動テーマの多様化についてその要因を多面的に検討する.また,地区衛生組織活動は1960年代後期に停滞・衰退したとされる.何が問題となりどのような反省がなされたのか,その後の公衆衛生活動への影響を含め考察する.そのためには関連する史資料の探索・収集作業が欠かせないため,国立国会図書館等による調査を実施する必要がある.感染状況を考慮しつつ(状況によっては「遠隔複写サービス」を利用するなどして),史資料調査を前進させたい.また,これまでに得られている研究成果を整理し,投稿論文の執筆作業を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大による移動制限等により,計画していた国立国会図書館(東京)等での史資料調査を実施できなかったこと,また研究成果発表のための学会参加がオンライン開催となったことから旅費等の使用がなく,次年度への繰り越しが生じた.研究を進めるために必要となる図書(古書含む)の購入や文献複写費などに充て計画的に使用する.
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