研究実績の概要 |
令和4年度の「1.入院クリニカルパスの効果評価」では、令和3年度に示した、パス利用例における①平均入院日数の有意な減少効果および③病院経営における、1例あたりの平均収支および黒字症例率の有意な高さに関し、令和3年度症例を加え同様に分析したが、いずれも令和2年度同様、パス利用例はパス未使用例に対し、平均入院日数は有意に短く、1例あたりの平均収支および黒字症例率は有意に高かった。 一方、「2.外来クリニカルパスの効果評価」として、外来パスとして運用中の術前検査パスが、入院日数の短縮効果および経営改善効果が入院単独よりもさらに有意に高い点を示した。令和3年度は、①③の令和3年度症例を加えた分析に加え、医療安全効果に関し、パス利用の有無による平成30~令和2年度間に退院した57,549名に対するインシデント報告率を、影響度レベル3a以上のレポート件数と報告率を比較した。その結果、パス利用例は、24,986名中2,119件(8.5%)に対し、パス未使用例は32,563名中7,452件(22.9%)と、有意にパス使用例の報告数が少なく(p<0.001)、影響度レベル3a以上のレポートにおいても、パス使用例が397件(1.6%)、パス未使用例が1,557件(4.8%)と有意にパス使用例の報告率が少なく約1/3倍の発生率を示した。(p<0.001) さらに、パス利用例による入院日数短縮効果の交絡を減ずるべく、入院日数20日以内入院に絞り、同様の分析を追加したが、これでもパス利用例の報告数は23,026名中1,247件(5.4%)パス未使用例が24,791名中2,607件(10.5%)、影響度レベル3a以上のレポートでは、パス利用例が186件 (0.8%)、パス未使用例が420件(1.7%)といずれも有意にパス使用例の報告数が少なかった。(p<0.001)以上の結果より、パス利用は医療安全面においても有効である点を示し得た。
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