研究実績の概要 |
遺伝性がんを含む希少疾患(以下、希少疾患)における医療経済評価方法について検討した。希少疾患では乳幼児期から生涯にわたる長期間の影響だけでなく、患者本人や家族の生産性損失、care giverの負担を考慮する必要がある。希少疾患の費用負担に関するscoping reviewでは、医療関連費用(入院、外来、地域プライマリケア)以外にも、ヘルスケア製品(薬剤、検査薬など)、生産損失・教育、移動・宿泊費用、管理、家族の負担などが検討すべき費用として挙げられていた (Angelis, 2015; Garcia-Perez, 2021; Currie, 2023;)。この結果は、valueの構成を12要因でとらえたInternational Society of Pharmacoeconomics and Outcome Researchのvalue flowerの考え方に通じる (Lakdawalla, 2018)。希少疾患の従来型の経済評価(費用効果分析、財政負担分析等)とCOIの費用項目を比べると、薬剤、入院、診断テスト、外来の費用は両者に含まれていたが、生産損失・教育費用、管理、家族の負担に関わる費用はCOIで特異的に検討されていた。費用効果分析に比べ、COIは社会的立場から希少疾患の社会的経済的費用を包括的に把握することが可能であり、医療資源配分に応用可能と考えられた(Marshall, 2023)。米国では379の希少疾患の医療経済的負担を9970億ドルと試していたが (Yang, 2022)、わが国における希少疾患のCOIは検討されていなかった。一方、希少疾患の診断や治療の医療負担に関するアンケート調査では、希少疾患の医療費について社会で応分な負担を担うことが妥当であるという見解が示されていた(Nakada, 2023)。
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