研究課題/領域番号 |
20K10333
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
玉置 岳史 関西医科大学, 医学部, 講師 (10460817)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 費用対効果 / 肺癌 / 化学療法 / 医療経済 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、進行期肺癌に対する抗がん治療薬の薬品情報と臨床情報を収集し、次年度以降で予定している研究解析で必須となるデータベースを作成した。 令和3年3月までに厚生労働省に承認され、日本肺癌学会の肺癌診療ガイドラインに記載されてる進行期肺癌に対する抗がん治療薬は39種であった。内訳は、細胞障害性抗がん薬 14種、上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬 5種、未分化リンパ腫キナーゼ阻害薬 5種、ROS1チロシンキナーゼ阻害薬 2種、BRAF阻害薬 1種、MEK阻害薬 1種、METチロシンキナーゼ阻害薬 2種、NTRKチロシンキナーゼ阻害薬 1種、血管新生阻害薬 2種、抗上皮成長因子受容体抗体薬 1種、免疫チェックポイント阻害薬 5種であった。このうち後発医薬品が存在するのは、細胞障害性抗がん薬 9種、上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬 1種、血管新生阻害薬 1種であった。肺癌組織型別には、非小細胞肺癌では、細胞障害性抗がん薬 11種(後発医薬品が存在するのは9種;以下、カッコ内には後発医薬品の種類数を記載)、上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬 5種(1種)、未分化リンパ腫キナーゼ阻害薬 5種、ROS1チロシンキナーゼ阻害薬 2種、BRAF阻害薬 1種、MEK阻害薬 1種、METチロシンキナーゼ阻害薬 2種、NTRKチロシンキナーゼ阻害薬 1種、血管新生阻害薬 2種(1種)、抗上皮成長因子受容体抗体薬 1種、免疫チェックポイント阻害薬 5種で、小細胞肺癌では、細胞障害性抗がん薬 6種(4種)、免疫チェックポイント阻害薬 2種であった。これら抗がん治療薬の各々について、薬価は厚生労働省保険局が運用している診療報酬情報提供サービスより、治療効果・副作用・生活の質・経済効果に関連する臨床情報はPubMedのデータベースより収集し、研究用データベースとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴う自粛期間・感染防止対策のために研究活動時間の制限が発生したために当初の予定よりも研究で必要となる進行期肺癌に関連したがん治療薬の生活の質・経済効果に関連する臨床データ収集の一部にやや遅れがみられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度前半には収集が不十分な進行期肺癌への抗がん治療薬の臨床データの補完を行うとともに、その後も必要時には研究開始後に進行期肺癌に対して新たに追加承認された抗がん治療薬の薬品情報、新たに判明した抗がん治療薬の臨床情報をデータベースに追加する。また、令和3年度後半以降には、シミュレーションモデルの作成、費用対効果の算出といった医療経済的な効果について決定木ソフトウェアを使用して解析していく予定である。なお、シミュレーションモデルの構築において、一部の抗がん治療薬では医療経済効果の評価に必要となるQOLなどの情報がどうしても入手困難なものが発生することが予測され、類似薬の情報での代用についても感度分析などを用いて妥当性や影響度合いを加味しながら慎重に検討していく必要がある。令和4年度以後にて解析した肺癌へのがん薬物療法の医療経済効果を用いて肺癌診療ガイドラインをもとにしながら医療経済的に最適な進行期肺癌患者への抗がん治療モデルを模索する見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象となる医療経済学に関連する研究会や学会への参加するための交通費、ならびに、研究対象となるがん薬物療法薬の臨床情報を図書館でのコピー費用、取り寄せ・運搬費用として計上していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大流行による研究会・学会のオンライン化や中止、図書館業務の縮小・休止が発生したために当該年度費用に残金が発生している。しかしながら、研究開始後にも進行期肺癌に対して新たに追加承認されたがん薬物療法薬(イピリムマブ・ニボルマブ併用療法、アテゾリズマブ・プラチナ併用化学療法など)があり、当初の研究計画に沿って研究開始以後でも新たに追加承認された進行期肺癌への抗がん治療薬も本研究の対象に加える必要がある。新たに追加承認された抗がん治療薬に関連した臨床情報のうち大学ネットワークより入手できない論文などを取り寄せるための費用として次年度において使用を計画している。
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