研究課題/領域番号 |
20K10339
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
石川 洋子 旭川医科大学, 医学部, 特任准教授 (30550660)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インフォームド・コンセント / 誤解 / 理解 / 倫理的義務 |
研究実績の概要 |
「治療であるという誤解」は、被験者が参加する研究において治療の一環であるという誤解のことである。誤解が生じる原因は、被験者が臨床研究を医療の一つの手段として受け入れることである。また医師主導型研究の場合、医師への信頼により医師が被験者に不利益な医療を勧めるはずがないという期待がある。そして多くの場合、被験者は最適な治療法が存在しないか、現在の治療効果が不十分な状況にある。その場合、社会的貢献として臨床研究に参加しつつ、頼みの綱としての新しい治療の可能性に期待するといった複雑な心理状況にあるかもしれない。臨床研究におけるインフォームド・コンセントは、通常の診療とは異なり任意性ではなく自発性の担保が必須である。「治療であるという誤解」が生じてしまった状態は、真のインフォームド・コンセントと両立しない。 被験者が誤解しないためには、通常診療を行う診察室ではない別室にて、研究であることを明確に説明することが必要である。研究中に被験者の誤解が予測された場合、誤解を修正するよう働きかけることは研究者の倫理的義務である。そのためには被験者に対して研究の目的についての理解を評価すること、研究者自身が不注意に被験者の誤解に寄与している可能性を検討することが必要になる。 「治療であるという誤解」は、インフォームド・コンセントの「同意能力」「説明」「理解」「同意」の4つの要件のうち、最も難しい要件の「理解」に関連しており、被験者にとって研究目的・内容について完全な理解を得ることは不可能である。ここに被験者保護としてのインフォームド・コンセントの限界がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021度の研究計画は、臨床研究実施者へのインタビューの実施であったが、新型コロナウイルス流行によるインタビュー実施時期と方法、実施可能性についての検討に難渋した。さらに、研究者自身の急な離職に伴い倫理委員会申請が困難となり研究計画を変更せざるを得なくなった。これにより研究計画に大幅な遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果に加え、臨床研究におけるインフォームド・コンセントのあり方について統合的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行に伴い、学会参加がオンラインとなったため旅費として計上していた予算を一部物品費に流用したものの、余剰金が発生した。今年度は国際学会への参加を予定していたが、国内学会への参加を増やし、国内旅費とし使用する。また、研究成果を英語論文として公表するための翻訳・校正費用として使用計画を変更する。
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