研究課題/領域番号 |
20K10340
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森 隆浩 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50384780)
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研究分担者 |
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
藤井 朋子 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (40793089)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 費用対効果分析 / 骨粗鬆症 / テリパラチド / 医療経済学 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は、我が国における骨粗鬆症の治療に関する費用対効果分析を施行し超高齢社会における骨折予防に関して医療経済学の視点からエビデンスの蓄積に貢献することである。本年度は研究代表者が筆頭著者である論文が、Archives of Osteoporosisに掲載された。 当論文ではシミュレーションモデルを用い、我が国において椎体骨折の既往のある骨粗鬆症の高齢女性に関する費用対効果分析を施行した。テリパラチド(毎日皮下注射の薬剤)は骨粗鬆症に関連する骨折、特に椎体骨折に対して高い予防効果を有する。テリパラチドの薬剤費は高額であるが、2019年にジェネリックが販売開始となった。当研究において、テリパラチド(薬剤費用はジェネリックで算出)2年間使用後にアレンドロン酸(週1回内服の薬剤)を8年間使用 (合計10年間使用)の群はアレンドロン酸のみ10年間使用の群と比較して費用対効果に優れないという結果を得た。当研究は我が国の超高齢社会における骨折予防に関して、医療経済学の視点から臨床家や政策決定者に新たな見解をもたらした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①費用対効果分析研究:研究代表者が筆頭著者である論文が骨粗鬆症の分野で著名な国際学術誌であるArchives of Osteoporosisに掲載されており、進捗状況は順調と言える。 ②医療・介護レセプト研究(医療介護費用に関して):NDB(National Data Base:全国医療レセプトデータ)を用い、骨粗鬆症関連の骨折(特に一番医療費が高額である大腿骨近位部骨折)の全国規模での医療費の算出を予定している。2021年3月末の時点において、筑波大学研究室にて本研究の解析のためのデータを整備している。 ③医療・介護レセプト研究(骨粗鬆症治療薬の継続率):薬剤継続率は骨粗鬆症の治療効果に大きな影響を及ぼす重要なパラメータであるが、我が国における先行研究に乏しい。今回某A市から入手済のレセプトデータを用いて我が国での種々の薬剤の継続率の実態を明らかにする予定であった。当初研究は順調に進んでおり研究成果を学会発表する予定であったが、途中データの不備が見つかり研究は中断となった。現在他の自治体から入手したレセプトデータを用いて本研究の施行を計画している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
我が国にて医療・介護費の増加は大きな社会問題である。我が国における骨粗鬆症の有病者数は約1280万人と推定されており、骨折は要介護に至る主因の一つであり医療・介護費の増大をもたらす。しかしながら我が国において骨折予防の費用対効果分析を専門の研究分野としている研究者は筆者を中心に数人と少なく、分析すべき課題は数多く存在しているのが実情である。 本研究では、我が国における骨折に伴う医療・介護費や骨粗鬆症治療薬剤の継続率の実態を医療・介護レセプトを用いた研究で明らかにし、骨折予防に関する費用対効果分析を行う。医療経済学の視点からの骨折予防に関するエビデンスの蓄積が期待でき、それらのエビデンスは臨床家にとって日々の臨床現場で高額な薬剤がその額に見合う治療的な効果を有するかの判断材料になるのみならず、エビデンスに基づく政策にも役立つ。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:学会参加費を計上していたが、COVID19の影響で学会はリモート開催となり旅費(交通費、宿泊費)がかからなかった。また研究員雇用費を予定として計上していたが、こちらもCOVID19の影響で研究室での研究員雇用は実施されなかった。論文の英文校正費を計上したが、発表した論文は国際共同研究であり英文校正費がかからなかった。上記が主たる理由で次年度使用額が生じた。
使用計画:2021年度も学会・勉強会に関してはリモート開催が続くことが予想されるが、普段遠方で参加できない学会・勉強会などにも参加できる良い機会と捉え、研究に有用な学会・勉強会には積極的に参加する予定である。また当該学会の活動に参加することが研究に必要な学会の年会費も計上予定である。また今年度は論文3本を発表の目標であり、英文校正費や掲載時のopen accessの費用を予定している。
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