研究課題/領域番号 |
20K10343
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
安倍 博 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (80201896)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 医学教育 / 概日リズム / 睡眠 / 睡眠日誌 / スリープスコープ / 学業成績 / 高照度光療法 |
研究実績の概要 |
医学教育と時間生物学的特性との関連性を見た先行研究から、1年次に睡眠に問題を有し成績の低い学生は2~3年次においてもその傾向を維持し続ける可能性が高いことが考えられた。そこで本研究では、①睡眠日誌・クロノタイプ・小型睡眠脳波計により測定した睡眠・時間生物学的特性と学業成績の関連性を1~3年次経年的に追跡調査することにより、睡眠と学業成績の関連性の年次動態を調べ、さらに①で抽出された学生に対して、②高照度光療法による介入を各年次で実施することにより、継続的な睡眠指導の経年的効果を調べる。 令和2年度は研究初年度として、1年次生110名を対象に、睡眠日誌とクロノタイプにより睡眠リズムを計測し、睡眠リズムに問題がない学生(規則群:29名)と問題がある学生(不規則群:31名)を抽出し、同意を得た上で小型睡眠脳波計により睡眠の質を測定し、両群を比較した。新型コロナウィルス感染拡大の影響で、令和2年度の前期はすべてオンライン授業となったため、睡眠リズム計測は、後期対面授業開始直後の10月に行った。睡眠脳波測定は、冬期(令和3年1月~3月)に行った。 現在データを分析中であるが、現在までのところ、睡眠脳波による各睡眠段階の指標に、2群間で有意な差は見られなかった(t検定)。ただし、先行研究で行った平成30年までの3年間の同じ調査でのデータと今回のデータを分散分析により比較したところ、ノンレム睡眠ステージ1とステージ3の合計時間に主効果が見られた。 今回のデータで睡眠の質に2群間で有意差が見られなかったことは、睡眠日誌による抽出時期と実際の睡眠脳波を測定した時期に時間差があったことが一因である可能性がある。また年度比較の結果から、コロナ感染拡大後の令和2年度の学生は、感染拡大前の学生に比べて睡眠が浅く、入眠に困難を抱えている学生が多い可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染拡大のため、令和2年度前期の授業がオンライン授業となり、入学直後(5月)の睡眠リズム測定は実施できなかった。しかし、後期(10月)から対面授業が開始し、当初予定していた睡眠リズムの計測とそれによる規則群と不規則群の学生抽出、さらに2群の睡眠脳波の測定を後期期間中に実施することができた、研究の今後の展開に必要なデータを収集することができたことから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度で得た睡眠リズムと睡眠の質のデータと、学業成績との関連を今後検討する。これらのデータを元に、睡眠リズムが不規則な学生、睡眠の質が低い学生、学業成績が低い学生を抽出し、2年次(令和3年度)の冬期(12月~3月)に同様の調査を追跡して行い、経年的な特徴を見ると同時に、高照度光療法による介入を行う。 令和3年度入学の1年次生に対して、令和2年度と同様の調査を行い、睡眠リズムと睡眠の質、学業成績との関連性を調べ、経年的変化をみる次年度の調査へと継続させる。 今回、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、平成30年までの先行研究のデータと令和2年度以降のデータとを比較することにより、コロナ感染拡大後の学生の睡眠リズム・睡眠の質への影響についても、引き続き検討する。 令和2年度の成果は、令和3年度の日本睡眠学会で発表する予定である。 【研究協力者】福井大学学生総合相談室・前川伸晃カウンセラー(臨床心理士・公認心理士)・研究補助、学生指導
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度のスリープスコープによる睡眠脳波測定の実施において、スリープスコープレンタル費及び委託解析費、被験者謝金に余裕があり、そのため残額が生じた。 令和3年度では、2年度に抽出した学生に対して、高照度光療法介入による効果検証を実施する予定である。その際、スリープスコープによる睡眠脳波を測定するため、レンタル費及び委託解析費、被験者謝金として使用する予定である。
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