医学教育と時間生物学的特性との関連性を見た先行研究から、1年次に睡眠に問題を有し成績の低い学生は2~3年次においてもその傾向を維持し続ける可能性が高いことが考えられた。そこで本研究では、睡眠日誌・小型睡眠脳波計(スリープスコープ)により測定した睡眠・時間生物学的特性と学業成績の関連性を経年的に追跡調査することにより、睡眠と学業成績の関連性の年次動態を調べ、さらに抽出された学生に対して、高照度光療法による介入を実施することにより、継続的な睡眠指導の経年的効果を調べた。 令和2~4年度において、1年次生を対象に、睡眠日誌により睡眠リズムを計測し、睡眠リズムに問題がない学生(規則群)と問題がある学生(不規則群)を抽出し、スリープスコープにより睡眠の質を測定した。1年次にスリープスコープの睡眠脳波を計測した規則群と不規則群の学生のうち、2年次進級後(1年次に留年した過年度生を含む)、実験の許可が得られた学生に対して高照度光療法介入を行い、介入前後の睡眠日誌による睡眠リズム及びスリープスコープの睡眠脳波による睡眠の質の変化を見た。令和5年度は、令和4年度に実施した高照度光療法介入の解析を行うとともに、研究の総括を行なった。 以上の研究により、1年次の不規則群の学生は、高照度光療法介入により入眠時間の変動が減少するなど睡眠リズムが規則的になり、起床時の睡眠感が改善する傾向が見られた。また2年次の不規則群の学生には過年度生が含まれていたが、全ての学生が3年次に進級した。以上の結果から、1年次から睡眠リズムが不規則であった学生に対して2年次以降に高照度光療法を介入することで睡眠リズムを改善する可能性が示唆され、睡眠に対する1年次からの継続的なモニターと支援が必要であることが考えられた。
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