研究実績の概要 |
【目的】小児慢性腎臓病の最多原疾患である先天性腎尿路異常では, 早期に尿β2-microglobulin(uBMG)が上昇することが多く, 「学校検尿のすべて令和2年度改訂」の策定により 学校検尿3次精密検査でuBMG /Cr の測定が必須となった.しかし現行の学校検尿では2次検尿まで所見のない場合にuBMG/Crの測定機会はない. 今回、小学校2次検尿の時点でuBMGが上昇している児童が, "蛋白尿の検出"と"現行の尿定性検査"により検出できているかを調査した。 【方法】滋賀県の小学生で2019-2023年度の学校検尿受検者のうち 2次検尿受検者の残余検体を用い, uBMG/Cr上昇(0.35μ g/mgCr以上)と"真の蛋白尿の有無", "尿定性検査結果(蛋白 and/or潜血)"を比較した. なお"真の蛋白尿陽性"は尿定量検査による尿蛋白クレアチニン比 0.15g/gCr以上とした. 【結果】真の尿蛋白陽性がuBMG上昇例を検出する精度: 感度 平均4.3% (95%信頼区間 -3.7 - 12.2)、特異度 平均90.5% (同 89.7 - 91.2), uBMG上昇を検出できなかった児童のuBMG/Crの分布は中央値 0.52μg/mgCr (IQR 0.39 - 0.76). 尿定性検査陽性がuBMG上昇例を検出する精度: 感度:平均 28.3% (同 1.0 - 55.7)、特異度 平均77.6% (同 75.3 - 80.0) uBMG上昇を検出できなかった児童のuBMG/Crの分布は中央値 0.55μg/mgCr (IQR 0.39 - 0.79)であった。 【考察・結論】尿蛋白検出を追求した現行の学校検尿システムでは尿BMG上昇例を検出するには感度が極めて低く、3次精密検診に至る前の2次検尿の段階で尿BMG上昇例が適切に検出されていないことが明らかである。
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