研究課題/領域番号 |
20K10362
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
村田 忠彦 関西大学, 総合情報学部, 教授 (30296082)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心停止 / 自動対外式除細動器 / 合成人口データ |
研究実績の概要 |
本研究課題では,心停止発生シミュレーションに基づく自動体外式除細動器(AED)の最適配置への合成人口データの応用研究に取り組む.合成人口データとは,研究代表者が,日本の全人口の世帯構成・構成員の年齢,性別,所得などを,公開されている統計に基づいて,仮想的に合成したデータである.研究代表者は2016年に日本全国規模の人口合成に成功し,合成人口データの利活用に関する研究を進めている.現在,研究代表者は,学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(JHPCN)の公募課題として,大阪大学サイバーメディアセンター,北海道大学情報基盤センター,東京大学情報基盤センター の協力を得て,日本全体の人口の合成を行なっており,日本全国の合成人口データが利用可能になっている.本研究課題では,合成人口データの活用事例の一つとして,心停止事例の65%が自宅で発生する現状に注目し, 自宅での心停止患者の救命に必要な自動体外式除細動器(AED)の日本全国の配置状況の分析結果をもとに,心停止患者の発生シミュレーションを実施し,適切なAEDの配置の検討を行う. 2021年度は,神奈川県相模原市を対象にしたシミュレーションを継続した.心停止患者に5分以内にAEDを運搬できるAEDまでの距離が往復300m以内である人口は.相模原市区部では,直線距離では24.2%から31.3%,道路距離では7.7%から9.2%であることがわかった.したがって,道路距離ではAEDを5分以内に届けられるのが,人口の1割にも満たないことがわかった.さらに,心停止患者を確率的に発生させたシミュレーションを行い,全国の平均AED適用率が1.38%のところ,相模原市で心停止事象の15%でAED搬送を試みた場合,直線距離では2.7%から3.6%の患者が,道路距離では0.08%から0.26%の患者が往復300mに居住することがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
心停止患者とAEDとの距離を道路距離を用いて計測し,AEDを有効な時間内に適用可能な往復300m以内に住んでいる人口を計測することに成功した.また,心停止患者発生シミュレーションにおいて,直線距離と道路距離を用いて,AEDの運搬可能な距離の患者の割合を測定したところ,直線距離では,全国の平均AED適用率の1.38%を上回る2.7%から3.6%の患者にAEDを適用可能であることがわかったが,道路距離で測定したところ,0.08%から0.26%と全国平均を大きく下回ることがわかった.対象地域のAED使用可能な割合を全国平均にするためには,対象地域の1%から2%(2500棟から5000棟)の建物にランダムに設置することで可能であることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,全国平均のAED適用率を達成するために必要なAED追加台数を見積もることができている.効率的に配置することによって,AED適用率を下げずに追加台数を減らすことが可能であると考えられる.どのような配置が可能であるかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延により,研究打合せおよび成果発表により,研究費を使用することができなかった.なお,本研究課題については新型コロナウイルスのために研究成果を予定通りに発表できていないため,1年延長を計画している(2022年度190万円,2023年度に130万円の支出を計画している). 2022年度は,以下の国際会議で成果発表を行う予定である.500,000円 Social Simulation Conference(20022年9月,イタリア・ミラノ),500,000円 Supercomputing Conference(2022年11月,アメリカ ・ダラス),900,000円 データ処理用のコンピュータおよびストレージ
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