非薬物療法のうち比較的侵襲性のある鍼治療を中心に、過去の国内のランダム化比較試験(RCT)における対照群設定状況および研究の質についてシステマティック・レビューを行った。医中誌Web、コクランCENTRAL、PubMed、および当研究室のファイルを用いて該当するRCT論文を収集し、年代別に評価した。 その結果、合計108件のRCTが選出され評価対象となった。対照群の種類は、1990年以前は異なる鍼手法が、2000年代には偽鍼・偽経穴が多く、2010年代には両者がほぼ同数でそれぞれ3分の1を占めていた。対照群と比較して有意差がなかったネガティブな試験は全体の27%であった。バイアスリスクは、「ランダム配列の生成」のみ1990年代以降に改善、「評価者の盲検化」については2000年代以降にやや改善していたが、「割付けの隠蔽」「患者の盲検化」「選択的アウトカム報告」についてはあまり変化していないか情報不足により評価困難であった。 2000年以降に増加した偽鍼・偽経穴の対照群が2010年代には減少したことについては、おそらく鍼灸研究者が偽鍼・偽経穴は完全に不活性ではないため特異的効果が存在し、薬剤のプラセボ対照RCTと異なり鍼の効果量が小さく見積もられることに気付いたことによるのではないかと思われる。鍼のRCTにおいて偽鍼・偽経穴の対照群から通常治療などの対照群にシフトする傾向は世界的な潮流である。 その他の非薬物療法の対照群については慢性疼痛診療ガイドラインを題材とし、運動療法、ヨガ、鍼治療の推奨の判定に用いられたシステマティック・レビューおよび臨床試験で何を対照群とした場合の有効性や効果量を参照しているのか調査中であるが、研究助成期間中に結論を得ることが難しく、継続して分析中である。
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