研究課題/領域番号 |
20K10376
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 洋介 京都大学, 医学研究科, 教授 (30583190)
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研究分担者 |
大前 憲史 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (60645430)
後藤 匡啓 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (80622894)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | QoL / 効用値 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、機械学習に基づくQOL評価法の理論的枠組みについて検討を行った。 具体的には、コホートや既存の大規模データベースに含まれる膨大な変数から機械学習によりQOLの推定が可能かについて、機械学習のモデル構築(後藤)、コホートデータ分析(大前)の専門家間での協議により検討を行った。具体的には、Partitioning around medoid(PAM)などの手法に基づき非階層クラスタリングを行い、潜在する階層構造を検討した上で、膨大な変数から次元の削減を適切に行えるかを確認した。さらに、ランダムフォレストやニューラルネットワーク等の手法を用いて一時点のQOL予測を機械学習で行うにあたり重要な、各パラメータのチューニング設定についても検討した。 令和2年度の検討の結果、経時的なQoLの変化の推定については現時点では理論的に限界はあるものの、一時点でのQoLの予測に関しては、情報の粒度の細かいコホートデータに含まれる変数群と、汎用性の高いレセプトならびにDPC、さらには健診情報から得られる変数群を組み合わせて活用することにより、これまで汎用されてきた古典的な予測モデル開発の手法と比較しても高い精度での推定が可能であることが推察された。 令和2年度は当初より理論的枠組みの構築を行うことが到達目標であり、おおむね目標は達成されたと考える。本年度の検討結果に基づき、令和3年度以降に実際のデータに基づきモデルを円滑に構築することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、QoL推定に用いることが可能な変数について、網羅的に検討を行うことができた。具体的には、レセプトならびにDPCに含まれるデータのうち推定に資すると想定される変数群、さらには、通常のレジストリやコホートで一般的に収集されている変数のうち、特にレセプトならびにDPCに含まれていない変数でQoLスコアの推定精度の向上に資すると考えられる変数群のリストアップを実施した。この検討結果を基にQoLの推定を実施していくことを予定しているが、実際2021年度以降使用するデータについては、研究代表者ならびに研究分担者がすでにアクセス可能なデータであることを確認しており、次年度以降も順調な研究の推移が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度以降は、まず第一に既存のコホートデータ・データベースから一時点でのQOL値の推定を試行する。具体的には、実際の既存のコホートデータならびにデータベースに含まれる変数を用いて、2020年度に検討された機械学習の手法に基づき、一時点でのQOLの値を推定する。推定するべきQOLは、これまでのQOL研究で明らかとなっている、健康関連QOLを構成する二大要素である、①身体的健康感、②精神的健康感、に加え、単一のインデックスである③効用値(utility)の3種を想定している。実際に推定された値は、コホートに含まれる既存のQOL尺度から直接測定された値と比較を行い、その推定性能を検証する。経時的なQOLの変化の予測については、2020年度の検討の結果、高い推定精度での予測は理論的に困難を極める可能性があるが、今後汎用性の高い診療情報ならびに変数を用いて試行を試み、許容できる程度の精度が担保されうるかについて実際に検討を重ねる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
直接研究者同士が集まり理論的枠組みを検討することを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、出張ならびに集会制限が各研究者の属する研究機関で発令された。そのため、直接のミーティングの代わりに、Zoomなどwebミーティングにより検討を行った結果、経費削減となった。 次年度以降は、余剰経費を基に、既存の商用データベース購入ならびにQoL調査を実施、または規模の拡大につなげ、より一般化可能性の高い研究結果が得られるよう努める所存である。
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