研究課題/領域番号 |
20K10381
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
石川 亜貴 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70464485)
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研究分担者 |
春日 亜衣 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (00718124)
水上 都 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (20749311)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 先天性QT延長症候群 / 遺伝学的検査 / アドヒアランス / 成人移行 / 遺伝カウンセリング |
研究実績の概要 |
先天性QT延長症候群(以下LQTS)は、致死的心イベントのリスクを伴うものの、無症状で経過する患者も多い遺伝性不整脈である。本研究では小児患者と親、医療者に対して量的・質的調査を実施し、遺伝を含めた疾患の正しい理解と受容を促しアドヒアランスの維持と自己管理能力を身につけるための問題点を明らかにし、成人移行を見据えた教育支援ツールの開発を目指すことを目的としている。 昨年度の文献研究に基づいて患者と親へのインタビュー内容を選定し、当院のLQTS患者5名(12-16歳)、親6名(39-47歳)を対象とし半構造化面接を行った。患者の背景としてLQTS病的バリアントありの患者は4名、心イベント歴ありの患者は4名であった。インタビュー内容を逐語録にしそれに含まれるテキストデータ用いて質的記述的に分析し【疾患理解・医療管理に必要な情報と心理社会的支援】【小児患者・その親それぞれへの心理社会的影響および必要な支援】【継続的通院・アドヒアランス維持に必要な支援】に分けて考察した。 患者の服薬や運動についてのアドアヒアランス維持の阻害因子には個別性がみられた。医療者が個々に阻害因子を聴き取り推測して、適切な支援を行い必要性が示唆された。また患者のアドヒアランス維持の促進因子には、自身の取り組みと医療管理の効果とを結びつけるような認識を促し「自己コントロール感」を実感しやすくする支援が有効であることが示唆された。親はアドヒアランス維持の促進因子として、医師の信頼のおける態度を数多く挙げており、親しみやすさ・質問のしやすさがshared decision-makingにつながっていた。また患者と親が成人移行を見据えて通院、服薬の管理を行っていくことが促進因子として働くことが示唆され、患者の理解度および自立度に応じて医療者と親とが協働して成人移行の支援を進めていくことの重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度には、医療者に対する量的研究を行う予定であったが、本学倫理委員会の申請が遅れ、令和4年度に行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、全国の日本小児循環器学会・小児循環器専門医、全国遺伝子医療部門連絡会議の維持機関会員施設の代表者を対象に量的研究「LQTSにおける遺伝学的診療(発端者および未発症家族の遺伝学的検査を含めた遺伝カウンセリング)に関する実態調査」を行う予定である。調査の内容は、LQTS患者の主治医である小児循環器専門医が、遺伝学的検査の適応があると判断した場合に、主治医として患者の遺伝学的検査の説明から結果開示、そして未発症血縁者のリスクの可能性についての説明や介入などの遺伝カウンセリングを、どこまで行っているのか、またどの時点から遺伝診療を専門とする医療者に介入を依頼しているのか、一方で遺伝子診療部門はLQTSの遺伝学的診療にどの時点(患者の遺伝学的検査、未発症血縁者の発症前診断など)から介入をしているのか、について実態をWebアンケート調査する。本調査から、循環器領域を専門とする医療者と、遺伝診療を専門とする医療者が円滑に連携、協働して遺伝学的診療をするために必要な課題や問題点を抽出する。 患者と親へのインタビュー調査、医療者への実態調査の内容を整理し、アドヒアランス維持、と自己管理、遺伝を正しく理解して成人移行につなげるための患者、親向けの教育支援ツール、また遺伝学的診療を行う上で、循環器領域を専門とする医療者と、遺伝診療を専門とする医療者が活用できる説明補助ツールを作成し、開発中のツールを患者、親、医療者、養護教諭に活用してもらい、意見を収集、修正を加え、改訂版を作成する。改訂版を活用し、継続研究につなげて、さらに評価を行う。
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