研究実績の概要 |
先天性QT延長症候群(以下LQTS)の患者やat risk血縁者を確実に個別化医療につなげるためには循環器領域の専門医と遺伝医療の専門職との連携協働が必須である。 本年度は両者の遺伝学的診療の実態を把握するため,それぞれの専門医、専門機関を対象にアンケート調査を実施した。 【日本小児循環器学会/小児循環器専門医対象の調査】163/628名(回答率25.9%),有効回答107名. LQTS診療経験あり103/107名,そのうち6割以上は診断目的の遺伝学的検査の経験があり,4割でat risk血縁者の遺伝学的検査の経験があった。81/107名で血縁者への遺伝の説明に心的負担(難しさ)を感じていた。課題として,遺伝学的検査の結果解釈の意見があった。 【全国遺伝子医療部門連絡会議維持機関会員施設対象の調査】57/140施設(回答率40.7%) ,有効回答57施設(大学病院36)。LQTSの遺伝カウンセリング件数(過去5年)が20件以上のハイボリューム施設は3施設,約半数は0件であり,施設間の差を認めた。LQTSの疾患特性を説明することに難しさを感じると回答した施設は51/57,難しさを取り除くために必要なこととして,LQTS専門の循環器領域の医療者からの支援 (86.5%), 説明補助ツール(53.8%),循環器専門の臨床遺伝専門医(50%)であった。 この結果より、LQTSの診療の主体は循環器領域の専門医であり,診断目的のLQTS遺伝学的診療は循環器内科/小児循環器医が中心となって行い, 遺伝医療の専門職は結果解釈と確定診断後の遺伝カウンセリング,at risk血縁者の発症前診断の時点で介入するのが望ましいことが示唆される。施設や地域の人材に応じて,循環器領域が負担を感じている遺伝の説明やバリアント解釈などについて,遺伝医療の専門職が介入,協働する体制が望ましいと考えられた。
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