本研究の目的は、すべての人に健康を実践する不平等のない医療提供体制を維持し、効率的な医療サービスを提供していくために、病床転換や医療資源の共同利用によって医療資源の集約を進めた際における地域の医療資源の効率性と患者の医療資源へのアクセシビリティの変更を明らかにすることである。 地域医療構想に基づく医療機関の役割分担やダウンサイジング、集約化、高度医療機器の共同利用などの議論が進められていくなか、医療機能が変化することによる地域ごとの影響について患者アクセシビリティと医療経営の側面から分析を行う。 研究開始以降、日本全国を対象とした患者アクセシビリティの評価のために必要な地理情報システムや道路網ネットワークデータを用意し、モデルシミュレーションによる病床転換に伴う他の医療資源への影響評価を行ってきた。北海道を対象として二次医療圏ごとの高額医療機器の台数を病床種別ごとの病床数によって説明されるモデルを相関式によって求め、国が示している2025年における病床の必要量の推計に基づいて高額医療機器の台数の変化や、その後の将来も含めた診療放射線技師などの人的資源の予測について分析を行った。また、新型コロナウイルス感染症が流行下においては、保健所と協力して地理情報システムの仕組みを用いた宿泊療養や自宅療養の療養者を対象とした健康観察ツールを開発・運用し、限られた医療資源の有効利用や必要な医療へのアクセスの維持に寄与した。 2023年度は、昨年度に引き続き、第8次医療計画の策定に関する情報収集の結果に基づき、マンモグラフィ装置などを含めた高度医療機器への患者アクセシビリティについて検討を進めたとともに、研究結果のとりまとめの作業を行った。また、国際学会において健康観察ツールの開発・運用の成果について報告した。
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