研究課題/領域番号 |
20K10386
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鈴木 恭子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50420857)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 二酸化塩素 / 空間消毒 / 流行性疾患 |
研究実績の概要 |
二酸化塩素は常温下で気体で存在し、有機物と接触して分解される際に殺菌作用を有するラジカル対である。現在消毒剤として使用される次亜塩素酸ナトリウムは常温下で液体として存在し、分解の際に発がん物質であるトリハロメタンを生じるが、二酸化塩素はトリハロメタンを生じないという特徴がある。また臨床現場で頻用されるアルコールは、ノロウイルスやロタウイルスなどのノンエンベロープウイルスには消毒効果がないが、二酸化塩素はエンベロープウイルスにもノンエンベロープウイルスにも殺菌効果を発揮する。この二酸化得塩素の殺菌作用を活用した研究である。研究の概要は、二酸化塩素ガス発生装置の設置空間と非設置空間で、それぞれ空間群における流行性疾患の発生状況の比較検討を行う。 流行性疾患の内容は、呼吸器感染としてインフルエンザウイルス(A/B)、パラインフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、マイコプラズマ、レジオネラ、消化器感染ではノロウイルス、ロタウイルス、カンピロバクター、サルモネラなどがあげられる。感染症の診断はマルチプレックスPCR法とし、呼吸器感染は咽頭ぬぐい液、消化管感染は便を検体とする。 二酸化塩素ガス発生装置空間のガス濃度をモニタリングし、安全性を確認するとともに、PCR結果で両空間群における流行性疾患の発生状況を確認する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験で使用する二酸化塩素ガス発生装置に対し、2020年内閣がSARS-CoV-2に対する効果がなく、使用しないようにと公的に発表したことから、ヒトに対する実験を控えることにした。また、その後2022年1月に消費者庁が効果の過大広告として措置命令を出し、2023年4月に措置命令が確定したことから、臨床実験は事実上実施不可能となった。このため、計画通りに実行することが困難になったため。
|
今後の研究の推進方策 |
従来はヒトのいる空間に対し、二酸化塩素ガス発生装置設置空間と非設置区間に分けることを想定していたが、ヒトのいる区間では実験できなくなったため、ヒトが常に存在しない空間を選ぶ。今回問題になったのが、密閉空間ではない空間においてガス濃度が上がらないということであったが、実際に非密閉空間における経時的に測定された実験がないことである。 医療現場は常に空調が回っているため、ヒトが常にいない空間における二酸化塩素ガス発生装置を設置し、どの程度ガス濃度が上昇するか、室温・湿度・照明などの要因とともに解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は二酸化塩素ガス発生装置に対する政府の公的な見解が出されなかったため、ヒトがいることが前提であった実験を実施することが一切できなかった。 2023年4月に消費者庁が二酸化塩素ガス発生装置に対する措置命令を出したため、同じ内容では研究実施ができないため、ヒトを対象としない研究に変更する。具体的には、ヒトが長時間滞在することのない空調の回る空間内に二酸化塩素ガス発生装置を設置し、二酸化塩素ガス濃度測定を24時間行い、実空間における濃度の上昇または低下の因子を探求する。
|