難病データベースは世界的に見ても貴重な疾患横断的症例データであり、その登録対象疾患は研究目的の介入試験実施に困難が伴う領域がほとんどである。しかし、この難病データベースに記録されているような薬物治療データの活用は、これまで手が付けられることがなかった。本研究の目的の1つは、これまで未検証だった難病データベースの薬物治療データから、指定難病の薬物治療の実態を把握し、その薬物治療の選択基準を同期間の関連研究の成果、診療・治療指針の記載等と比較することにより明らかにすることにある。 2014年分までの難病データベースの入力情報では薬物療法に関するデータが単独の分析には十分とは言えない状況であることがわかった。よって指定難病を対象疾患として承認された医薬品(新有効成分また効能追加)の承認審査時に評価されたデータ(ランダム化介入試験とそれ以外)を用いた分析を行うこととした。 以上の結果、承認審査時に評価されたデータは、ランダム化介入試験であり、症例数の不足を市販後の使用成績調査でデータを補っていることがわかった。 また、ランダム化介入試験から得られるデータを、補完できるリアルワールドデータ情報源として寄与できるデータ・症例登録項目の調査については、2014年までの難病データベースでは適応外使用に関するデータが圧倒的に少なく、効能追加により承認された医薬品に関しても、難病データベースの薬物療法の記録が使われていることはなかった。 以上、2014年までの難病データベースを治療薬開発に使用するのにはかなり限界があることが明確になった。今後は市販後の使用成績調査項目との差異から、ランダム化介入試験を補完できるデータ・症例登録項目について明らかにしていく事ができるのではないかと考えている。
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