研究課題/領域番号 |
20K10398
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊倉 真衣子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (90821819)
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研究分担者 |
榛沢 和彦 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (70303120)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 血栓症 / 災害医療 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本人における災害後の血栓症が、脳・心血管イベントに及ぼす中長期的予後を明らかにし、災害関連死や二次健康被害を予防するために、被災そのもののストレスやその後の避難環境によって起こりうるリスクを明らかとし対策を講じていくことを目的としている。 研究方法:新潟県中越地震、東日本大震災などの災害では避難生活により多数の深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)が発生した。そのDVTの長期予後、肺塞栓症の合併の有無、脳・心血管疾患などが増加していないかどうかについて、DVT検診を実施し検証する。 研究結果:令和5年度は、新潟県中越沖地震、中越地震被災地域住民 597名(男性122名、女性475名、平均年齢76.3±7.6歳;45-94歳)にDVT検診を実施し、101名(16.9%)の方にDVTを認めた。東日本大震災被災地域住民に対する検診では、128名(男性 22名、女性 106名、平均年齢75.6±7.9歳;48-90歳)にDVT検診を実施し、17名(13.3%)にDVTを認めた。 また、被災地域住民1093名に追跡調査票を郵送し、887名(回収率81.2%)の方から回答を頂いた(うち調査への同意を得られた859名:男性188名、女性671名、平均年齢76.3±8.5歳;37-103歳)。震災後の脳血管疾患発症2.2%(19名)、心血管疾患発症3.1%(27名)、肺塞栓症発症0.6%(5名)であった。 考察:一度できた下肢の静脈血栓は消退を繰り返し、慢性期にも影響を及ぼす可能性が示唆された。令和6年度はこれまでのデータをとりまとめ、肺塞栓症および脳・心血管イベント(脳梗塞・心筋梗塞等)の頻度と、DVT陽性群及び陰性群における発症率について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、COVID-19感染対策に配慮のうえ、コロナ禍以前の検診規模に戻す方向でDVT検診を実施した。新潟県中越沖地震、中越地震被災地域の検診受診者は、前年度までより増加したが、東日本大震災被災地域の検診では、コロナ禍のため数年にわたりDVT検診を実施できていなかったこともあり、検診受診数は少なかった。東日本大震災被災地域では、もともと医療期間へのアクセスが不便な地域もあり、DVTのフォローアップができていない方が少なからずみられ、医療機関への受診勧奨を行った。また併せて、追跡調査を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、これまでのデータをとりまとめ、DVTの長期予後、肺塞栓症を合併の有無、脳・心血管疾患などが増加していないかどうかについて検証する。また被災当時の避難環境とDVTとの関連についても検討し、避難環境の改善に向けた提言を行う。 また、令和2-5年度は、COVID-19感染拡大防止のため、検診規模を縮小することを余儀なくされたため、今年度は検診規模をコロナ禍以前に戻し、より多くの方にDVT検診を受診していただけるように計画している。本年8月に新潟県中越沖地震被災地域、10月―11月に中越地震被災地域で実施予定である。なお東日本大震災被災地域については、日程を調整中であるが、郵送による追跡調査についても継続を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2-5年度は、COVID-19感染拡大防止のため、検診規模を縮小することを余儀なくされ、予定通りの検診を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。令和6年度の検診スタッフの旅費、会場費、郵送費に使用する予定である。 なお、本年1月に発生した能登半島地震被災地域では、長期間にわたり過酷な避難生活が続き、ライフラインの復旧も遅れたため、被災者の健康状態の悪化が懸念される状況にあり、これまでのデータをもとに提言をまとめ、血栓症予防活動を別途予定している。
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