研究課題/領域番号 |
20K10423
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研究機関 | 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所) |
研究代表者 |
立花 直子 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所), 睡眠医学研究部, 部長 (10291501)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナルコレプシー / 中枢性過眠症 / 眠気 |
研究実績の概要 |
関西電力病院を受診し、ナルコレプシーと診断された患者の基礎情報のデータべース作製がほぼ終了した。他の疾患では生じない非常に特異的な症状であるカタプレキシー(情動脱力発作)を伴うⅠ型ナルコレシーであっても、発症から診断までに約20年かかっていた。思春期発症の患者が多くを占めるが、日本の学校が「眠気」に対して寛容であり、たとえ授業中に居眠りが目立っていても成績が良ければ不問にされ、成績が悪い場合でも周囲の生徒も同様に(おそらく睡眠不足にて)居眠りしていて成績が悪いことから病的とは認識されず、ナルコレプシー患者が事例化するのが社会人になってからであることがうかがえた。さらに、強い眠気を訴えて受診した40歳未満の若年者については、ナルコレプシーの診断基準を満たさないために特発性過眠症と診断せざるをえない患者が半数以上混じることもわかり、一般開業医のレベルで疑えるようにするには、広く「中枢性過眠症」としての切り口をわかりやすくまとめていくことが必要と思われた。 一方、Swiss Narcolepsy Scaleの日本語訳を完成させ、パイロット的に使用してみたところ、ナルコレプシーⅠ型の患者であっても半数は偽陰性となり、重症睡眠時無呼吸症候群や高齢者においては、偽陽性となる例が約4分の1の患者に認められたことから、日本人患者の使用に適するものかどうかさらに深く検討し、質問票に加えて、フローチャート式の判定基準を開発するべきと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
引き続きCOVID-19流行のために睡眠関連疾患センタ―への新患紹介が病院外からは減っており、院内紹介は維持しているが、こちらの患者群は高齢で睡眠時無呼吸症候群を疑われての紹介のみであった。この状況の下、院外から「眠気を主訴とする患者を紹介してくる開業医や一般医」とのコミュニケーションをつくることが困難となり、当初の開業医や一般医にフィードバックをかけるという計画が頓挫した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、院外からの紹介患者について、紹介元の医師にフィードバックを返していくことで、院外の非睡眠専門医がナルコレプシーを疑えるようにしていくことを目標にしていたが、COVID-19流行の影響で院外からの紹介が減っていることに加え、過去のデータベース作製の過程でナルコレプシー患者の有病率が日本での先行研究から推測された値(0.16%)ほど多くないのではないかという疑問も生じた。また、現在の診断基準では、ナルコレプシーと特発性過眠症が十分に鑑別しきれないという問題があることもわかったことから、この二つを「中枢性過眠症」として扱い、プライマリケアレベルにおいて、適切に中枢性過眠症を疑い、紹介が必要と判断する助けになるマニュアルを作製するという目標に軌道修正することにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行の影響を受けて、データ入力者として採用した方が引き続き遠隔で可能な仕事に絞って在宅勤務となったことで人件費・謝金が余った。旅費も海外学会での情報収集として計上していたが、これもCOVID-19流行のために参加することができなかった。また、年度初めに考えていたSwiss Narcolepsy Scaleの有用性を吟味するためのデータ収集が十分にできていなかったことから、日本語版作製が遅れており、これによっても次年度使用額を生じる結果となった。1年ずれる形にはなるが、Swiss Narcolepsy Scaleの日本語版作製および一般医向けの中枢性過眠症のフローチャートを作製するための費用として使用する計画である。
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