研究課題/領域番号 |
20K10423
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研究機関 | 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所) |
研究代表者 |
立花 直子 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所), 睡眠医学研究部, 部長 (10291501)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナルコレプシー / 中枢性過眠症 / 眠気 / カタプレキシー / てんかん |
研究実績の概要 |
関西電力病院を受診し、ナルコレプシーと診断された患者の基礎情報のデータべースより、カタプレキシー(情動脱力発作)を伴うⅠ型ナルコレシプシー患者について発症から診断に至るまでの間に経た他の医療機関における対応や診断について調べた。これまでの当研究において、思春期発症が大部分を占める中枢性過眠症については、日本の学校が「眠気」に対して寛容であり、たとえ授業中に居眠りが目立っていても成績が良ければ不問にされ、成績が悪い場合でも周囲の生徒も同様に(おそらく睡眠不足にて)居眠りしていて成績が悪いことから病的とは認識されず、中枢性過眠症の患者が事例化するのが社会人になってからであることがわかっていた。したがって、眠気のみならず、カタプレキシーという特異的な症状があるⅠ型ナルコレシプシーはその他の中枢性過眠症患者よりも疑われやすいのではないか という仮説を立てた。 45例のⅠ型ナルコレシプシー患者を対象として調べた結果、カタプレキシーという症状が病的なものではないかと患者自らが考えていた例は21例(53.3%)であり、カタプレキシーが受療行動につながったが、うち7例は最初の受診先でてんかんと診断されていた。4例においては、カタプレキシーが頻発もしくは重積状態(意識は保たれるが動けなくなる)となったことで、救急受診しており、そこでは過呼吸発作、一過性脳虚血発作、原因不明の意識障害であるとの診断を受け、睡眠専門医への紹介は成されなかった。また、Ⅰ型ナルコレシプシーのうち、最初に開業医に相談した者は8例(17.7%)であり、カタプレキシーという素人に取っても不思議な症状については、総合病院や大学病院でないとわからないのではないかと考えた者が大部分であったことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度は引き続きCOVID-19流行のために、院外から「眠気を主訴とする患者を紹介してくる開業医や一般医」とのコミュニケーションをつくることが困難となった状況は同様であった。また、データベース解析したところ、中枢性過眠症と結果的に判断された症例は、Ⅰ型ナルコレプシーでは紹介元が開業医や一般医ではなく、規模が大きい総合病院の脳神経内科や総合内科であり、Ⅱ型ナルコレプシーと中枢性過眠症では、産業医が多いことから研究開始時に考えていた開業医や一般医にナルコレシーが疑えるようにしていく計画を軌道修正することに時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、院外からの紹介患者について、紹介元の医師にフィードバックを返していくことで、院外の非睡眠専門医がナルコレプシーを疑えるようにしていくことを目標にしていたが、紹介元の多くは開業医ではないことがわかり、カタプレキシーが脳神経内科や精神科といったてんかん患者を扱うことが多い専門科において、てんかんに間違われること、眠気については、職場で問題になって産業医が関与する例が多いことに鑑み、これらの分野の医師に対して啓発につながる学会発表や、紹介が必要と判断する助けになるマニュアルを作製することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行の影響を受けて、参加を予定していた国際学会への参加を見送らざるを得なかったこと、Swiss Narcolepsy Scaleの日本語版作製するための費用として計上していたが、この質問紙が日本人患者においては、有用ではないことがわかり、作製を見送ったことの2点で次年度使用額が生じた。なお、2023年の米国睡眠医学会は開催が決まり、社会的情勢からも渡米が可能となったことから、この学会参加の旅費に当て、発表内容は論文化して投稿料に使用する。また、啓発用のマニュアルを完成させ、印刷費や郵送料に使用する予定である。
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