研究実績の概要 |
アレルギー性鼻炎においては、即時型反応に免疫グロブリンE(IgE)が関与しない経路が存在することが報告されているが、未解明である。2023年度は、2022年度に引き続き、調査に同意した調査参加者のうち、2020年度からに2021年度に唾液を回収できた314名の小児の唾液細菌叢およびサイトカインの解析を行った。質問票のデータを併せてアレルギー性鼻炎および花粉症の有無およびその症状との関連を明らかにした。解析集団においては、参加児のアレルギー性鼻炎有病率は33.7%で、スギ花粉症有病率は28.0%であった。アレルギー性鼻炎有病率、スギ花粉症有病率においては、性差をみとめなかった。アレルギー性鼻炎と唾液細菌叢においては、アレルギー性鼻炎症状と唾液細菌叢については、α多様性のいくつかの尺度において関連がみられ、「中程度」に鼻症状が邪魔な群は、唾液細菌叢の多様性が低下していた。また今年度は、全検体の唾液においてアレルギーと関連すると考えられるIL-2, IL-4,およびIL-10をIL-5に加えて解析した。「中程度」に鼻症状が邪魔な群は無病群に比べ有意に唾液中のIL-10濃度が低いことが明らかになった。しかしながら、IL-2, IL-4, IL-5の値については有意な違いが見られなかった。IL-10は抑制性サイトカインとして知られている。アレルギー性鼻炎においては、唾液中のIL-10産生を低下させないことが症状の緩和に重要な役割を果たす可能性がある。
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