研究課題/領域番号 |
20K10431
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
鰐渕 英機 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90220970)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 芳香族アミン / 職業性膀胱癌 / 遺伝子発現異常 / 膀胱癌治療戦略 |
研究実績の概要 |
研究実績 本年度は、芳香族アミン類投与ラット膀胱の遺伝子発現異常を解析し、膀胱癌発生に至る細胞増殖カスケードに係るメカニズムを解明するため、F344雄ラットを用いた4週間の芳香族アミン短期曝露実験を行った。その際、芳香族アミンの選定において、職業性膀胱発癌の発生を認めた福井県の化学工場で用いられていた芳香族アミン6種(aniline、p-toluidine、o-toluidine (OTD)、2,4-xylidine、o-anisidine、2-chloroaniline)に着目し、aniline、p-toluidineと、国際がん研究機関(IARC)で発がん性を認められているOTDについて検討した。加えて、OTDに類似した構造を有し、同化学工場で生産されているacetoaceto-o-toluidide (AAOT)についても検討した。その結果、4つの芳香族アミンのうちOTDおよびAAOTにおいてのみ、ラット膀胱粘膜上皮に細胞増殖を伴う過形成病変を認めた。そこで、病変の認めた芳香族アミン2種(OTD、AAOT)に曝露した膀胱尿路上皮において共通して発現が変動した遺伝子を選出し、その推定されるメカニズムをIngenuity Pathway Analysisを用いて検討した。その結果、新たにERKやPI3Kを介した腫瘍関連メカニズムやPDGFを介した壊死抑制メカニズムが検出された。今後は、以前に報告したJUNおよびPTGS2とともに、腫瘍発生メカニズムへの関与を検討する。また、上記の膀胱癌発生メカニズムについて、芳香族アミンによる職業性膀胱発癌の遺伝子変異との関連を検討する事で、膀胱癌治療ターゲットを探索予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 ラットを用いた芳香族アミンの短期曝露実験を行い、膀胱尿路上皮への影響を与える芳香族アミンo-toluidineとacetoaceto-o-toluidideを確認するとともに、その遺伝子発現異常についても検討した。加えて、新たに腫瘍関連や壊死抑制メカニズムに関わる遺伝子群を選出した。 上記の芳香族アミンは、福井県の化学工場で曝露されていた物質であり、芳香族アミンによる職業性膀胱発癌への外挿が比較的行いやすく、これらの結果について、芳香族アミンによる職業性膀胱発癌の遺伝子変異との関連を今後、検討する予定である。 以上から、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後 今後は上記の結果を踏まえ、ERK、PI3K、JUNおよびPTGS2について、腫瘍発生メカニズムへの関与を詳細検討する。また、芳香族アミン曝露職業性膀胱癌と一般の膀胱癌の次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析を行い、その詳細な遺伝子の異常を比較検討し、その発生メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由と使用計画 来年度に実施する予定である膀胱癌の次世代シークエンサー解析は高額であるため、本年度は動物実験やmicroarray解析の費用の一部を校費で充当した。繰越分は来年度に膀胱癌の次世代シークエンサー解析に使用する予定である。
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