研究課題/領域番号 |
20K10436
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 治夫 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (40638772)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 都市マイクロバイオーム / 人工環境の微生物 / メタゲノム / 薬剤耐性 / 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) / MetaSUB国際コンソーシアム / バッチ効果 |
研究実績の概要 |
微生物による感染症の増加要因として、薬剤耐性、都市化による人口集中、交通機関の発達による人の国際的な移動などが考えられる。これまでに、国際コンソーシアム MetaSUB (Metagenomics & Metadesign of Subways & Urban Biomes http://metasub.org/projects/) では、都市交通システムのマイクロバイオーム(微生物群集とその遺伝子の総体)を明らかにしてきた。しかし、人の国際的な移動イベントに伴う都市マイクロバイオームの変動を調査した研究は前例がない。2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、国外からの来訪者が激減し、「緊急事態宣言」に伴い学校施設などが閉鎖された。そこで、本研究では、COVID-19パンデミック前後の都市人工環境マイクロバイオーム(ウイルス・細菌・薬剤耐性遺伝子の組成)の変動を明らかにすることを目的とする。 2020年度は、既存の都市マイクロバイオーム・データを用いた解析を実施した。世界60都市で採取された4,728サンプルのメタゲノム解析(ウイルス・細菌・薬剤耐性遺伝子の世界的分布)に関する論文がCell誌に受理された。MetaSUB国際コンソーシアムで標準化された手法を用いて、COVID-19パンデミック時における都市マイクロバイオームのサンプル採取とメタデータ記録を実施した。2020年の春(4月の「緊急事態宣言」前後8時点)に日本国内の各都市で人工環境(地下鉄の駅、バス停、学校施設)表面からサンプルを採取した。2020年の夏(6月)に日本国内15都市の人工環境からサンプルを採取した。バッチ効果 batch effect を最小化するために、サンプル処理(DNA/RNA抽出、ライブラリ調製、ショットガン・シークエンシング)を同一施設で実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、2020年度はオリンピック・パラリンピック開催前後のサンプル採取を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、オリンピック・パラリンピックが延期された。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部の人工環境(公共施設)への立ち入りが困難となり、交付申請書に記載した2020年のサンプル採取の時点と地点を変更した。
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今後の研究の推進方策 |
今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、当初の研究計画にはなかったCOVID-19パンデミック前後の都市マイクロバイオームの変動に関する研究を実施する(https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/data/faq.pdf)。国際スポーツ大会(オリンピック・パラリンピック)など多くの人が集まるマスギャザリング・イベントの代わりに、国外からの来訪者が激減したCOVID-19パンデミックに着目し、「人の国際的な移動に伴う都市マイクロバイオームの変動を調査する」研究目的の範囲内であるという判断に基づき研究計画の変更を行う。人の国際的な移動が、2019年以前は通常、2020年は激減、2022年以後は回復と予想し、研究計画を一部変更する。2019年以前に採取しディープフリーザーで超低温冷凍保存してきた未処理のサンプルをCOVID-19パンデミック前の都市マイクロバイオームを調査するために使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、オリンピック・パラリンピックが延期された。2021年度以降に、サンプル処理(DNA/RNA抽出、ライブラリ調製、ショットガン・シークエンシング)を同一施設で実施するための費用を計上した。
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