| 研究課題/領域番号 |
20K10436
|
|---|
| 研究機関 | 慶應義塾大学 |
|---|
研究代表者 |
鈴木 治夫 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (40638772)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
| キーワード | Microbiome / Bacteria / Antimicrobial Resistance / COVID-19 Pandemic / Olympic/Paralympic Games / Urban / Built Environment / Shotgun Metagenomics |
|---|
| 研究実績の概要 |
微生物による感染症の増加要因には、薬剤耐性などの病原体要因に加え、都市化による人口の密集、交通機関の発達による人の国際的な移動などの社会的要因が関与している。感染症の国際化に対応するためには、感染症のアウトブレイク（パンデミック）が発生する前の状態を定期的に観測する国際協力体制の構築が必要である。
国際コンソーシアム MetaSUB (Metagenomics & Metadesign of Subways & Urban Biomes; metasub.org) では、標準化されたプロトコルを用いて、都市のマイクロバイオーム（微生物群集とその遺伝子の総体）の共通点と相違点を明らかにしてきた。しかし、人の国際的な移動イベント前後に都市マイクロバイオームの変動を調査した研究は前例がない。2020年は、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）パンデミックにより、国外からの来訪者が激減し、「緊急事態宣言」に伴い学校施設などが閉鎖された。そこで、本研究では、COVID-19パンデミック下において、国際イベント（オリンピック・パラリンピック）開催前後の都市マイクロバイオームの変動を明らかにすることを目的とする。
2020年度から2021年度にかけて、国内各都市の人工環境（例えば、鉄道の駅など）表面から定期的にサンプルが採取された。この中には、2021年に開催された東京2020オリンピック（7月23日から8月8日）・パラリンピック（8月24日から9月5日）期間中に採取されたものも含まれている。サンプルは米国ニューヨーク市のWeill Cornell Medicine（Mason Lab）へドライアイスで輸送した。バッチ効果を最小限に抑えるために、サンプル処理（DNA抽出、ライブラリ調製、ショットガン・シークエンシング）は、MetaSUB国際コンソーシアムの共通施設で実施されている。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、1年延期された後、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）パンデミック下で開催された。大会期間中およびその前後に、日本国内の各都市でサンプル採取を行なった。これらのサンプルは、米国ニューヨーク市のWeill Cornell Medicine（Mason Lab）にドライアイス輸送した。バッチ効果を最小限に抑えるため、サンプル処理（DNA抽出、ライブラリ調製、ショットガン・シークエンシング）は、MetaSUB国際コンソーシアムの共通施設で実施されている。科研費2022年度最終年度課題の延長申請を行った。
|
| 今後の研究の推進方策 |
ショットガン・メタゲノム配列データを用いて、都市マイクロバイオームを解析する。都市マイクロバイオームの解析においては、微生物の系統・分類学的組成に加えて、遺伝子機能（薬剤耐性遺伝子）の組成も解析する。データ解析には、オープンソースのバイオインフォマティクス・ツールを使用する。異なる時期（2017年から2021年）の都市マイクロバイオームの多様性に有意な差が認められるかを検定する。具体的には、サンプル内のα多様性（マイクロバイオームを構成する微生物の系統・分類学的多様性）と、サンプル間のβ多様性（異なる時期や場所の間で観測されるマイクロバイオームの差）をそれぞれ分析する。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】バッチ効果を最小限に抑えるために、MetaSUB国際コンソーシアムの共通施設で実施されているサンプル処理（ショットガン・シークエンシング）が完了した後に使用する。
【使用計画】2023年度に、1サンプルあたり1万円のサンプル処理費用を使用する。
|
