研究課題/領域番号 |
20K10439
|
研究機関 | 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター |
研究代表者 |
内山 巌雄 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター, その他部局等, 研究員(移行) (20151897)
|
研究分担者 |
谷川 真理 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター, その他部局等, 研究員(移行) (50291018)
東 賢一 近畿大学, 医学部, 准教授 (80469246)
東 実千代 畿央大学, 健康科学部, 教授 (10314527)
青野 明子 大阪国際大学, 人間科学部, 教授 (70368398)
萬羽 郁子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20465470)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 化学物質過敏症 / 臭い / ストレス応答 / 認知 / 行動 |
研究実績の概要 |
化学物質に対する過敏状態の解明は、臭い負荷による脳機能イメージング研究によって、外的ストレスに対する大脳辺縁系を介した作用機序に焦点があてられてきた。本研究では、随意的な眼球運動に関与する大脳の領域が前頭前皮質の前頭眼窩野にもあり、サルの実験では嫌悪刺激への応答がみられることに着目し、臭い負荷による脳機能イメージング研究で得られた知見をもとに、臭い負荷による滑動性追従眼球運動(SPEM)検査との関係を把握する。SPEM検査は簡易であることから、簡易検査法の開発に寄与する基礎データを得る。また、認知(行動)療法や運動療法等を含む介入効果についても臭い負荷SPEM検査法で客観的に検証する。令和2年度は、研究組織における研究倫理審査で承認を得たうえで、介入を実施する前のベースライン調査を実施した。本調査では、公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターに隣接する医療法人悠仁会百万遍クリニックの外来患者から患者群9名、性別と年齢を患者群と一致させた健常者群8名をモニター会社からリクルートし、嗅覚負荷検査を実施した。本実験では、化学物質過敏症有訴者と健常者に対して、においスティック(第一薬品産業株式会社製)による臭い負荷を行い、負荷時および負荷前後の前頭前皮質の脳血流状態(OxyHb、DeoxHb、TotalHb)を近赤外光脳機能イメージング装置(株式会社島津製作所社製Light NIRS)で計測した。また上記検査と同時にSPEM検査を実施して計画通りの計測データを得た。実験にあたっては、検査前の嗅覚検査、問診等を行った。また、環境過敏、自律神経系の知覚、感情や不安、ストレス、ライフイベント等に関して質問紙による生活・心理調査を実施した。このデータを用いて脳機能への影響や化学物質過敏状態との関係を評価する予定である。実験は3月初旬に完了した。現在、データ解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に際して必要な倫理審査の承認手続きを終了し、令和2年度は17名の被験者(患者群9名、健常者群8名)にたいして介入前のベースライン調査となる嗅覚負荷実験を実施した。すべてが計画通りに順調に進んでおり、SPEM検査では詳細なデータが得られ、今後のデータ解析に期待がかかる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度の検査結果のデータ解析(脳血流、SPEM、臭気や心理等の主観評価)を踏まえて、認知(行動)療法を中心とした介入研究を実施する。介入では、令和2年度の検査結果や患者の状態を踏まえて適切に実施する。また、介入後に嗅覚負荷検査を実施し、介入による効果を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前頭前皮質の脳血流状態を測定するために使用した株式会社島津製作所社製の近赤外光脳機能イメージング装置について、当初の予定ではLABNIRSを使用する予定であったが、メーカーの諸事情によりLight NIRSに変更となった。そのため、メーカーからのレンタル料金が安価となった。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、認知行動療法プログラムの事前検討がほとんどできず、その経費が計上できなかった。従って、これらの経費を次年度に回し、介入で用いる認知行動療法プログラムの検討を実施し、その内容を充実させるとともに、事前検討費用と増額するプログラム使用料にあてることとした。
|