研究課題/領域番号 |
20K10446
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齊藤 麻理子 (小畑麻理子) 東北大学, 医学系研究科, 助教 (80404234)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | チクングニアウイルス / 蚊媒介性感染症 / フィリピン / 日本脳炎ウイルス |
研究実績の概要 |
チクングニヤウイルスと同様にフィリピンで流行している蚊媒介性感染症の日本脳炎について、媒介蚊から日本脳炎ウイルスを検出したこと、フィリピンでは依然としてGenotype3が主に流行していることを国際誌に発表した。他のアジア諸国ではGenotype 1が主流であることから、チクングニアと同様、フィリピンでの蚊媒介性感染症は近隣諸国とは異なるウイルス株が流行していることが分かった。島国であるフィリピンにおける蚊媒介性感染症の感染伝播経路は他のアジア諸国とは異なっていることが示唆された。
さらに、ターラック州で飼育されている約200頭のブタから採取した血清を用いた実験結果に対し統計学的解析を行った。ブタにおける抗日本脳炎ウイルスIgGはブタの年齢(月齢)が上がるについて有意に増加していた。一方、IgMについては年齢による差異は認められなかった。 ブタの血液および鼻ぬぐい液からもRT-PCRでウイルスが検出され、蚊と同じGenotpye 3であったが、系統樹では異なるクレードに属するものもあった。鼻ぬぐい液からのウイルス検出は感染ブタが蚊を媒介せずに他の個体へ感染させる報告は既報にもあったが、ターラックのようなヒトと近い場所ではさらにその感染リスクが高まることが改めて示唆された。 本研究の対象とした約80のHouseholdにおいて、IgM, IgG, RT-PCRのいずれかが陽性となった家庭数は8割以上にのぼり、対象地域においては日本脳炎ウイルスが広く蔓延していることが判明した。当該成果について国際誌に再投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19流行対応の影響でRITMの実験体制は大きく変わっており、COVID-19以外の研究を現地で推進するには時間的、物理的にかなり制約があることが伺えた。また現地研究者との打ち合わせをRITMにて対面で行い、COVID-19以降はチクングニヤのナショナルサーベイランスがあまり進められていないことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
チクングニアについてはRITM側のPIを打ち合わせを行い、既存の検体から検査をすすめていくこととした。ただし、RITMで行うには物理的な制約(実験室の利用スケジュール)、マンパワーの問題があり、それらの解決・調整に時間がかかっている。 一方、フィリピンにおける日本脳炎に関してはブタでのサーベイランス結果について現在2報目を準備している。昨年度、一度投稿したがRejectとなり、現在再投稿中である。今年度中のアクセプトを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行時、カウンターパートであるRITM側のほぼすべての機能が国のCOVID-19検出中心に切り替えられた。実験室の多くがCOVID-19検査のために利用され、研究員の多くもCOVID-19検査対応に従事せざるをえなくなり、COVID-19以外の研究を行うには大きな制限があった。また、倫理委員会もCOVID-19関連のものを優先して審査することとなり、倫理審査に大幅な遅れがあった。 現在はRITMでも他の研究を行う余裕ができつつある。日本からの渡航も再開し、RITM側の本研究のPIとも定期的にディスカッションを行えるようになったが、COVID-19流行時から現在までフィリピンでのチクングニアウイルスサーベイランスはほとんどできていないことを確認している。またCOVID-19以降RITMのラボのマンパワーが不足しており、既存検体を検査する研究体制を調整中である。 並行して日本脳炎の論文化は進めてゆく。今年度中のアクセプトを目指している。
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