研究課題
本研究では、日本人小児を対象に尿中グリホサートの測定法を開発し、日本人におけるグリホサート曝露レベルの経時的変化、季節間差、性差、また殺虫剤曝露マーカーとの相関などグリホサート曝露の特徴について評価することが目的である。2020年度には尿中グリホサートを固相抽出カラム(強陽イオン交換および弱陰イオン交換)による前処理後に、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計にて定量分析する方法を開発した。グリホサートの絶対回収率は88%、検量線は良好な直線性が得られ(r2=0.989)、同時再現性(n=6)は5.1%CV (coefficient of variation)、検出下限値は0.08μg/Lのパフォーマンスを示した。2021年度は2006年、2011年および2015年の10月に日本人小児(4~6歳)各年50名から採取した早朝尿(計150検体)、2012年8-9月および2013年2月に3歳児各季節42名から採取した早朝尿(計84検体)を分析し、尿中グリホサートの75パーセンタイルおよび最大濃度は、それぞれ0.20および1.33 μg/Lであることを明らかにした。2015年の集団の尿中グリホサート濃度は2006年に比べて有意に高く、経時的なグリホサート曝露レベルの上昇が示唆された。この成果は国際科学雑誌International Journal of Hygiene and Environmental Healthに掲載された。2022年度は、測定値の解析を進め、尿中グリホサート濃度に季節間差、性差はないことを明らかにした。また、有機リン系殺虫剤やピレスロイド系殺虫剤曝露マーカーとの関連も見られなかった。尿中グリホサート測定を大規模疫学調査に応用すべく、測定法のハイスループット化に向けて改良法の開発を行い、良好な成果を得ることができ、現在は論文投稿を準備中である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Food Hygiene and Safety Science (Shokuhin Eiseigaku Zasshi)
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