研究実績の概要 |
本研究は、健康影響を及ぼす可能性の高い芳香族アミンを対象とした尿中からの簡便な前処理法を用いつつ高感度・高精度な分析法を開発し、高度な分析技術や知識を持たない分析者でも正確な定量値の得られる実施可能なスクリーニング系を構築することを目的とし、将来的には健康診断項目に追加しても対応可能なように多検体処理法も念頭に置き、その開発に挑む。 本年度は、1)加水分解条件、2)誘導体化法、3)抽出溶媒、4)脱水法について検討を行った。1)の加水分解条件については、酸性、アルカリ性の両条件で可能であった。現状では、対象となる芳香族アミンのN-グルクロン酸抱合体およびN-硫酸抱合体を対象としており、その後の有機溶媒による抽出などを考慮するとアルカリ条件下での加水分解が好都合であるが、誘導体化法などを鑑みて最終的に何れを採用するかの判断を行う。2)の誘導体化については、MBOCA(4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン))、アニリン、ナフチルアミン、トルイジン(o-,m-,p-)、アニシジン(o-,m-,p-)などを尿から有機溶媒で抽出し、MBTFA (N-メチル-ビス( トリフルオロアセトアミイド)を添加するのみでTFAできることが判明し、大幅な前処理法の短縮化に期待が持てる。3)の抽出溶媒については、ヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、酢酸エチルを検討した結果、トルエンおよびジクロロメタンで良好な結果が得られ、80~100%の回収率が得られた。4)の脱水法については、ジメトキシプロパンが使用する尿量の30倍以上必要であった。
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