研究課題/領域番号 |
20K10452
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
三崎 健太郎 静岡県立大学, 看護学部, 助教 (40468591)
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研究分担者 |
井上 健一郎 静岡県立大学, 看護学部, 教授 (20373219)
高村 岳樹 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (50342910)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | oxy-PAHs / アレルギー増悪作用 / 酸化的損傷 / プロモーション活性 / RNA測定 |
研究実績の概要 |
肺胞上皮(A549)細胞を用いて、ダニ抗原によるIL-8産生を強く増強させる含酸素多環芳香族炭化水素(oxy-PAHs)として、NCQなどのキノン類、oxy-PAHのニトロ体である3-NBAOを見出しており、抑制させるoxy-PAHとしてBPOが認められた。単独での曝露においても複数のoxy-PAHsがIL-8産生を有意に増大させることを確認した。一方、IL-8等のRNA誘導の変動を調べたところ、抗原同時曝露においてこれらのoxy-PAHsが増強(BPOは抑制傾向)を示すことを確認している。ヒト急性T細胞性白血病(Jurkat)細胞およびFoxp3を組み込んだJurkat細胞(Treg細胞様)のそれぞれを培養し、増殖速度などから培養および物質曝露条件の検討を進めている。 一方、oxy-PAHs曝露において、活性酸素による細胞障害が考えられたため、イニシエーション活性として複数の酸化的損傷マーカーの検討を行った。A549細胞に対して活性酸素を測定する系のうち1.過酸化水素を測定する系、2.ジヒドロエチジウムを用いた系、3.ミトコンドリア膜電位を測定するキット等について検討を行い、過酸化水素を測定する系が簡便かつ感度も十分で、タンパク質抽出試薬による処理で影響を受けない事がわかった。また発ガンプロモーション活性を示す化合物としてoxy-PAHのBPO、oxy-PAHのニトロ体である3-NBAO、比較対象としてPAHのB[k]FAの3物質に絞り込んで、Bhas42細胞に3回曝露して14日後のRNAを抽出してRNAseq測定による遺伝子発現パターンの違いを調べることとして、実験を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
oxy-PAHsのアレルギー増悪作用評価(短期曝露影響)として、代表的なoxy-PAHsに対して、肺上皮細胞による評価に加え、分化誘導したT様細胞による評価も進めている。各種T細胞分化への影響の遺伝子やタンパク質の発現変化による測定は途上である。一方、発ガン影響評価(長期曝露影響)として、oxy-PAHsに対して酸化的損傷マーカーの検出系の検討まで実施したところであり、各物質の活性測定を進め、発ガンイニシエーション過程の寄与を調べる。評価対象とする複数の発ガンプロモーション物質を選択し、Bhas42細胞における曝露後の遺伝子誘導の増減の評価を進めており、寄与遺伝子の同定につなげていく。
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今後の研究の推進方策 |
oxy-PAHsのアレルギー増悪作用評価(短期曝露影響)では、肺上皮細胞における他のサイトカインやケモカインの誘導、さらにFoxp3組み換え細胞における各種シグナル誘導の増強に関わる化合物をスクリーニングして、アレルギーを顕著に増悪させる物質を絞り込んでいく。今後、各種シグナル阻害剤によるIL-8産生への効果などを調べて作用機構の解明を目指す。さらに、in vivo系において、気管内投与における抗原、多環芳香族化合物の共曝露影響(炎症反応やT細胞感作性など)を調べる予定である。 発ガン影響評価(長期曝露影響)では、イニシエーション過程として、oxy-PAHsの活性酸素発生能力、酸化的損傷生成について、活性測定を進めていく。発ガンプロモーション過程においては、選択を行った物質に対して、Bhas42細胞における曝露後の遺伝子誘導の増減の評価を進め、寄与遺伝子の同定を目指し、機構解明に結び付けていく。 加えて、複数の化合物を同時曝露した際の、各活性の変化を評価する。特に異なるシグナル経路を介する化合物の組み合わせに注目し相乗効果を探求する。
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