研究実績の概要 |
含酸素多環芳香族炭化水素(oxy-PAHs)のアレルギー、発ガンへの影響を調べ、統合的リスク評価を目指している。肺胞上皮(A549)細胞を用い、oxy-PAHsとして複数のキノン類、oxy-PAHニトロ体の3-NBAOの非抗原下曝露で有意なIL-8産生増大が見出されていたが、各種サイトカインmRNA誘導パターンに違いが見られた。Foxp3組み換えT細胞性白血病(Jurkat)(Treg様)細胞に複数の化合物を曝露させたが、IL-10タンパク質は検出できなかった。A549細胞で強いIL-8産生が認められた5,6-ChQを対象に、オスICRマウスに、物質およびダニ抽出物を6週間、数回気管内投与した際の肺炎症増悪(白血球浸潤等)を認めた。 一方、活性酸素によるDNA損傷を高感度検出可能なUMU試験用サルモネラ菌NM8001で、oxy-PAHsであるBPOの遺伝毒性を調べたが、-S9、+S9、フラビンモノヌクレオチドを用いる代謝活性化法では活性が得られなかった。培養細胞系での活性酸素発生について検討が必要である。TA98,TA100株を用いたAmes試験において、+S9でPhO、1,2-NphQ、9,10-PhQ、BAQが0~4 rev./nmolの弱い、NCQが11~16 rev./nmolのある程度の変異原性を有することがわかった。また、発ガンプロモーション活性物質としてBPO、3-NBAO、PAHのB[k]FA、代表的な活性物質TPAに対し、マウス胚線維芽(Bhas42)細胞に3回曝露し14日後のRNAを抽出し、RNAseq測定により遺伝子誘導パターンを調べた。TPA特異的に多くの遺伝子に変動が見られたが、全物質共通、また各物質特異的なものもあり、細胞接着、分化、増殖等に関わる遺伝子に着目し顕著なもの数十種へ絞り込みをしている。今後、原因遺伝子の同定を進めていく。
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