研究課題/領域番号 |
20K10453
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
与五沢 真吾 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70381936)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 酸化亜鉛ナノ粒子 / セネッセンス |
研究実績の概要 |
ZnOナノ粒子(ZnONPs)をヒトケラチノサイトHaCaTに曝露させたときに放出される細胞外小胞の分析により、ZnONPsが細胞分化を誘導することを昨年までに明らかにした。今年度は分化とともにセネッセンスが誘導される可能性とその分子メカニズムの解明を目指した。βガラクトシダーゼ陽性細胞の増加や、セネッセンスの分子マーカーであるp21の発現誘導などを確認できた。セネッセンスの際に細胞はSASP(senescence associated secretory phenotype)因子を分泌するが、その際に分泌物に含まれることが知られているIL-8について、ZnONPsに曝露させた細胞の培養液中において、濃度の上昇がELISAにより観察された。IL-8はROS(活性酸素種)により誘導されることも知られているが、ZnOナノ粒子により細胞内ROSが蓄積されることが既にわかっており、矛盾しない結果が得られた。またセネッセンスの際に活性の抑制がしばしば報告されるサーチュインについては、有意な変化がみられなかった。以上のことから、ZnONPsはHaCaTに対してIL-8分泌を伴うセネッセンスを誘導すると考えられた。さらに、皮膚において天然保湿因子(NMF)を産生するブレオマイシン水解酵素(BH)の発現低下が免役蛍光抗体法およびイムノブロット法で確認できた。分化誘導によるインボルクリンの発現増加既に確認できており、このことから角質層の角化外膜であるコーニファイドエンベロープ形成促進によるバリア機能向上が期待できると考えていたが、今回の研究でセネッセンス誘導によりBHの発現低下が確認できたため、同時にNMF産生が抑制され保湿機能が低下する可能性が考えられた。つまりZnONPsは、皮膚バリア機能に対して正にも負にも影響しうる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HaCaT単独培養時の反応についてまとめることを優先したため、共培養の研究が遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
早急に単独培養の研究をまとめあげ、共培養の実験を進める。現在、共培養によりそれぞれを単独培養する場合よりも多くのIL-8の培養液中への放出を確認している。これがビトロゲルを介しても起こるのか、さらにIL-8放出の相乗効果がセネッセンス誘導とどのように関係しているのかを明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
共培養にかかわる実験研究計画の遅延が原因であり、今年度は共培養を本格的に開始しそれらに関する物品を購入する予定である。
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