研究課題/領域番号 |
20K10457
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 匡弘 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (70446649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラスミド / カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 / 系統解析 |
研究実績の概要 |
解析に用いるプラスミド塩基配列データを得るため、日本国内で臨床分離されたカルバペネマーゼ産生菌を含む232株の腸内細菌科細菌(Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Enterobacter cloacae等)についてillumina MiSeqまたはNextSeq及びOxford Nanopore MinIONによるゲノム解析を行い、unicyclerによるアセンブルを行った。232株のうち、205株はプラスミド上にカルバペネマーゼを保有し、177株のInc型を決定できた。カルバペネマーゼであるIMP-1遺伝子はK. pneumoniae、K. oxytocaにおいてはIncFプラスミド、E. cloacaeにおいてはIncHI2プラスミド上に見つかり、それぞれ優位を占めていた。IMP-1の伝達・保有にはIncFとIncHI2型プラスミドが重要な役割を担っていた。ゲノム解析によって得られた塩基配列情報を用いたプラスミドの系統ネットワーク解析結果と臨床分離株の分離背景から総合的に判断したところ、同一プラスミドが数年間にわたり維持されていたと判断できる系統が複数あった。特にIncHI2ではプラスミドのORF構成に多様性が生じていた。経年変化を追跡可能なプラスミド集団として、進化と拡散の推定に利用できると考えられた。 IncHI2については多くのE. cloacaeから検出される系統であることが臨床分離株のデータ及びNCBIデータベースから取得したプラスミドとの比較から確認された。しかし一塩基多型を用いた系統樹解析では多様性が低く、十分な識別能が得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では約150株のゲノム解析を予定していたが、232株の解析が終了し、計画した数を大幅に上回った。NCBIデータベースからの完全長ゲノムのダウンロードはK. pneumoniaeでは396株、E. cloacaeでは96株が得られており、プラスミドのInc型についても決定済みである。同一医療機関由来の分離株が多数を占めたが、IncHI2については同一施設内での変化に加え、多施設との比較も可能であり、多様性評価の解析対象として進めることとした。その一方、プラスミドの多様性を評価するアルゴリズムの考案については停滞しているため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
プラスミド多様性評価の手法として、プラスミド間の距離行列を作成し、その中の距離のばらつきを多様性指標とし、プラスミド拡散状態の推定を試みる。用いるプラスミドデータとしては本研究で解析した数年間にわたり維持された複数系統および、NCBIデータベース上の特定の薬剤耐性遺伝子保有プラスミドが想定される。 また、IncHI2プラスミドの比較による変異部位の詳細な解析、及び競合アッセイ並びに接合伝達能を行うことで、構造変化が生じたプラスミド保有株の生存能力を評価する。 以上の解析を通して、薬剤耐性プラスミドの拡散に関する知見を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
入札により予定額よりやや購入費が抑えられたため。
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